長寿命型人工関節の臨床応用推進に関する研究

文献情報

文献番号
200500265A
報告書区分
総括
研究課題名
長寿命型人工関節の臨床応用推進に関する研究
課題番号
H17-トランス-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高取 吉雄(東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科 )
  • 川口 浩(東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科 )
  • 茂呂 徹(東京大学大学院医学系研究科)
  • 石原 一彦(東京大学大学院工学系研究科)
  • 塙 隆夫(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)
  • 岩崎 泰彦(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)
  • 水野 峰男(財団法人ファインセラミックスセンター)
  • 高玉 博朗(財団法人ファインセラミックスセンター)
  • 瀧川 順庸(大阪府立大学大学院工学研究科)
  • 山脇 昇(日本メディカルマテリアル株式会社)
  • 中村 孝志(京都大学大学院医学系研究科感覚運動系外科学専攻整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
68,016,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工関節の最大の合併症である弛みの阻止を目指し、生体適合性と潤滑性に優れたMPCポリマーをナノスケールで表面にグラフトした人工関節摺動面を創製した。本研究の目的は、これまでの基礎研究の成果を臨床の現場に迅速に応用するため、人工股関節に関する生体工学的研究、生体内安全性の評価を完成させるとともに、人工股関節と並んで手術件数の多い人工膝関節への本技術の応用を目指し、生体工学的な検討を行うこと、臨床試験に向けたデータ登録・管理システムの構築を行うことである。
研究方法
長寿命型人工股関節の臨床応用のための検討としては、MPC処理の同定方法および至適処理条件を検索し、長期の摩耗試験を行った。また、MPC処理による摩耗抑制機序を検討した。長寿命型人工膝関節の臨床応用のための検討としては、人工膝関節摺動面へのMPC処理方法を検討した。また、人工膝関節の摩耗試験条件を設定し、予備検討を開始した。さらに、MPC処理したポリエチレン表面の生体内安全性の検討、および臨床試験に向けたデータ登録・管理システムの構築を行った。
結果と考察
MPCポリマー処理の同定方法として、XPS分析、FT-IR分析、水による静的接触角の測定、蛍光物質ローダミン6Gを用いた染色による顕微鏡観察、TEM観察を確立した。さらに、この同定方法を用い、至適MPC処理条件を確立した。また、長期の耐摩耗効果の検討のため、金属骨頭と組み合わせて摩耗試験を行い、MPC処理が長期にわたりポリエチレンライナーの摩耗を抑制すること、長期の歩行負荷をかけても処理効果は残存することを明らかにした。来年度は、さらに長期の摩耗試験を継続するとともに、臨床応用を見据え、滅菌操作や長期保存がMPC処理に与える影響を検討する予定である。
人工膝関節摺動面へのMPC処理方法としては、ポリエチレンインサート、金属(コバルトクロムモリブデン合金)表面への処理方法を確立した。また、手術後の歩行を再現するよう人工膝関節の摩耗試験条件の設定を行い、短期の摩耗試験を行った。この結果、股関節と同様の摩耗抑制効果が観察できた。来年度はこの摩耗試験条件を用い、さらに長期の摩耗抑制効果を検討する予定である。
MPC処理したポリエチレン表面の生体内安全性については、細胞毒性試験を行い、安全性を確認した。
データ登録・管理システムの構築については、人工股関節と膝関節の登録用紙を作成し、10施設を登録施設として、登録の試行を開始した。
結論
以上の結果は、長寿命型人工関節の臨床応用推進の確信を得るに十分な結果であった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-