多様な主体による世代間相互支援プログラムの構築と効果の検証

文献情報

文献番号
200500049A
報告書区分
総括
研究課題名
多様な主体による世代間相互支援プログラムの構築と効果の検証
課題番号
H15-政策-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 伯朗(東北大学大学院経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 日野 秀逸(東北大学大学院経済学研究科 )
  • 藤井 敦史(東北大学大学院経済学研究科)
  • 佐藤 康仁(東北学院大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,010,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現行社会保障制度における世代間相互支援のプログラムの、公共部門から民間企業、家計、民間非営利部門へのシフトの可能性を定量的に検証することである。
研究方法
(1) はじめに非公的セクターの検討の必要性を知るため、世代会計の手法を用いて、世代別の生涯純負担額を推計し、社会保障支出の影響について定量的推計を行った。
(2) 次に市町村の介護サービス事業の形態と自治体の福祉関連の財政支出といかなるの関連を分析した。
(3) また、社会的企業による社会サービスの提供について、英国社会的企業14団体を対象として調査を行なった。
(4) さらに、医療・介護サービスについて、日本生活協同組合連合会医療部会に加盟している法人を対象に聞き取り調査や、統計資料分析等を行った。
結果と考察
(1) 2000年時点における世代会計推計の結果、社会保障の受益を考慮しても将来世代の生涯純負担額は現在世代の6倍を超え、現在のままでの社会保障システムの維持は容易ではない。
(2) 地域統計の分析により、介護サービス事業収支は利用量に比例して改善され、事業の付加価値誘発額分析から、直営事業は地方圏で相対的に重要性が高いことが分かった。
(3) 英国の社会的企業では、一般市場から事業収入を得ることで、財源ミックスによるサスティナビリティを確保し、組織の自立性、自律性を維持している。
(4) 生活協同組合法人の医療サービスでは、診療報酬等の独自性はないが、組合員が非組合員にも拡張している自主的保健活動は大きな発展を示している。
結論
(1) 公的な社会保障・福祉サービスの縮小は受益を減らし、純負担を増加させるが、少なくとも将来世代にとっては、その世代間不均衡を改善するため望ましい政策といえる。
(2) 介護サービスは、非公的部門による供給の可能性を探った上で、地方圏で直営事業が必要な場合は、近接自治体が合同した方が、財政的な負担が減少し望ましい。
(3) 英国の社会的起業家が地域資源(人的資源)を発掘し、ソーシャル・キャピタルを構築し、エンパワーメント・プロセスを提供している手法は、日本のNPOやコミュニティ・ビジネスにとって重要なヒントになる。
(4) 医療では公共部門を前提としつつ、非営利民間の協同組合等も補完してサービスが提供可能と言える。医療生協の多くは、介護事業を合わせて展開しており、医療と介護の複合的提供も可能と言える。

公開日・更新日

公開日
2006-05-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200500049B
報告書区分
総合
研究課題名
多様な主体による世代間相互支援プログラムの構築と効果の検証
課題番号
H15-政策-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 伯朗(東北大学大学院経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 日野 秀逸(東北大学大学院経済学研究科 )
  • 藤井 敦史(東北大学大学院経済学研究科 )
  • 佐藤 康仁(東北学院大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、現行の世代間相互支援のプログラムの公共部門から非公的部門へのシフトの可能性を検証することである。
研究方法
 はじめに公的セクターから非公的セクターへのシフトの必要性を世代会計の推計を通じて明らかにする。その後、医療、介護、児童福祉、ボランティア、メンタルヘルス、NPO等を通じた社会福祉サービスの提供の各分野に関して、様々な主体による社会福祉サービスの提供の可能性と問題点について検討が行われる。
結果と考察
 世代会計推計の結果、社会保障の受益を考慮しても将来世代の生涯純負担額は現在世代の6倍を超え、現在の社会保障システムの維持は容易ではない。
 社会福祉サービスの選択に関するアンケート調査では、医療については非公的な供給主体に対する満足度が高く、児童福祉については満足度に大きな差はないが、公的部門の方がばらつきが大きい。
 公的部門の供給に関して、地域統計による分析によれば、自治体提供の介護サービスでは規模が大きいほど事業効率は高く、直営事業では地方圏で付加価値誘発効果が高い。
 非公的部門の供給に関して、社会的企業では行政からの資金の他に独自事業収入が組織の自立性や自律性を維持させている。また、生活協同組合法人による医療サービスでは、診療報酬制度等の制約で、収入の独自性はないが、自主的保健活動が組合員内外の地域住民に対して大きな発展を示している。このほか、ボランティア行動率、メンタルヘルス維持活動、家庭内育児供給の分野で回帰分析を行い、家計部門の自発的サービス生産・供給機能が確認された。
 これらの結果は、社会保障機能における非公的部門の必要性と可能性を示している。
結論
 総論として、公的な社会保障・福祉サービスの縮小は将来世代にとっては世代間不均衡を改善するため、望ましい政策といえる。また、各分野において、社会保障機能における非公的部門が機能する可能性や条件も示された。
(1)介護サービスは、直轄事業は地方圏では経済効果が大きく、複数の自治体が連携した事業規模が望ましい。
(2)日本においてNPOやコミュニティ・ビジネスが機能するためには、英国社会的企業の運営経験(財源や企業家の社会資本の醸成機能)を応用することが重要となる。
(3)医療では公共部門を前提としつつ、非営利民間の協同組合等も補完し、介護事業も合わせたサービスが提供可能と言える。
(4)ボランティア供給や自主的なメンタルヘルス維持、子育て機能などにおいて、本研究によって示された条件整備により、家計部門による自発的サービス生産、提供機能が果たされる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500049C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究は、公的部門中心の社会保障制度の維持可能性、改革の必要性、非公的部門へのシフトの必要性と可能性に関する課題を論理的、実証的に明らかにすることによって、その目的を達している。本研究の学術的特徴は上記の点について、英国、北欧の実地調査に基づき、国際的に比較可能な世代会計の手法に基づき、実証的、定量的に分析している点である。社会的意義に関しては、「なぜ」、「どれだけ」、「どの分野で」、「誰に」、「どのように条件を整えて」社会保障機能をシフトするべきか根拠を示しながら提示している点が特徴である。
臨床的観点からの成果
<本研究は臨床研究ではないため、本項目の該当はなし。>
ガイドライン等の開発
 本研究は今後の社会保障政策の運営に関する研究である。このため、特定の個人または団体の事業活動、治療等の行動を規範付けもしくは方向付けるものではなく、ガイドラインに相当する行動憲章を策定するものには該当しない。
 しかし、本研究の成果は中央政府もしくは地方政府その他公的主体の意思決定における参照資料を提供できる機能を有している。
その他行政的観点からの成果
 本研究グループに含まれるメンバーの行っている世代会計は、これまで『経済財政白書』でも推計され、行政上の意思決定に関し、大きな注目を集めている指標である。本研究の定量的成果は、
(1)財政改革、社会保障改革等の必要性の理論的根拠を提供し、
(2)改革の方向性と量的規模を評価するための評価軸を提供し、
(3)同時に公的部門が必要かつふさわしい分野を区分し、
(4)厚生労働省が政策的に整備するべき条件や諸環境を明らかにし、
根拠にもとづき説明責任を果たすための行政上の必要資料を提供している。
その他のインパクト
 平成18年2月24日に、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会主催の平成17年度厚生労働科学研究政策科学推進研究事業公開シンポジウム「少子高齢社会とどう向きあうか」(東京都千代田区JAビル)
にて、本研究成果に関して報告を行った。

発表件数

原著論文(和文)
21件
『東北学院大学経済学論集』,『国民医療』,『日本医療経済学会会報』,『都市問題』,『社会・経済システム』,『玩具福祉研究』他
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
「生活時間と暮らし、健康に関するアンケート調査」,「公的部門の財政支援の変化が民間による社会福祉事業に及ぼす影響に関する理論的考察」(以上2件、平成16年度総括研究報告書所収)
その他論文(英文等)
1件
"Japanese Aging and Social Welfare Program By Diverse Entities," (平成16年度総括研究報告書所収)
学会発表(国内学会)
7件
日本地方財政学会,日本医療経済学会第27回研究大会,第7回日本NPO学会,日本協同組合学会,第26回日本計画行政学会,第4回玩具福祉学会,第5回玩具福祉学会.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成18年2月24日に、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会主催の平成17年度厚生労働科学研究政策科学推進研究事業公開シンポジウム「少子高齢社会とどう向きあうか」(東京都千代田区JAビル)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐々木伯朗
「介護サービス事業における地域経済と地方財政」
住居広士、坂本忠次編『介護保険時代における経済と財政』勁草書房、第2章所収(近刊)  (2006)
原著論文2
吉田 浩
「プレイ・ケア・プログラムの効果の定量的評価に関する研究」
『玩具福祉研究』 , 3 , 13-26  (2005)
原著論文3
吉田 浩
「玩具に対する支出が父親の育児時間に及ぼす影響に関する実証分析」
『玩具福祉研究』 , 4 , 22-33  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-