成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究

文献情報

文献番号
200401276A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎米厚(鳥取大学医学部衛生学)
  • 白坂知信(北仁会石橋病院)
  • 廣 尚典(アデコ株式会社健康支援センター)
  • 松下幸生(独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、最初の1~2年でわが国の成人の飲酒パターンとアルコール関連問題の実態を把握するための調査を実施した。今年度はさらに、この調査結果を有効に利用するために、久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)の改訂を試みた。また、KASTを含めてわが国で多用されているCAGE、AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)の有用性についても検討した。以下、有用性検討とテスト開発とに分けて記載する。
研究方法
有用性検討: 対象者は以下の3群である。1) 実態調査の対象者(N=2,547)、2) アルコール依存症の専門治療施設入院者(N=721)、3) 断酒会会員(N=1,550)。実態調査の自記式回答部分には、上記AUDIT、CAGE、KASTの質問項目に加えて、新たなスクリーニングテスト開発のための約40の質問項目が組み入れられている。専門治療入院者には入院1ヶ月前後に、また、断酒会会員には飲酒している頃の様子を想起してもらい調査を実施した。これらの調査結果に関して、1) テストの得点分布、2) テスト結果によるアルコール依存症者の割合、3) テスト間の判定の一致率、について検討した。
テスト開発: 外的基準として「治療施設入院者(初回のみ)+実態調査のICD-10依存症」を依存症、「実態調査の依存症以外の対象者」を正常者として、ロジスティック解析、ROC分析等から、男性用、女性用の新しいスクリーニングテストの試案を作成した。
結果と考察
有用性検討: 本研究の検討範囲内では、3種ともほぼ同等の高い有用性が確認された。しかしながら、一部で否認や加齢による認知機能低下の影響が懸念される結果も得られた。テスト開発: 男性用、女性用、それぞれ10項目、8項目からなるテストの試案を作成した。各質問項目を1点とし、男性用で4点、女性用で2点をcut-offにすれば、ROC分析で、既存のKAST、CAGE、AUDITのいずれより、その弁別能力が優れていることがわかった。
結論
今年度の研究から、既存のスクリーニングテストの有用性が改めて確認された。しかし、同時にこれらのテストより弁別能力の優れた、性特異的(男性用および女性用)な2種のテストを開発した。新たなテストに関しては、今後試用を繰り返し、その信頼性、妥当性を検証していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200401276B
報告書区分
総合
研究課題名
成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎米厚(鳥取大学医学部衛生学)
  • 白坂知信(医療法人北仁会石橋病院)
  • 廣 尚典(アデコ株式会社健康支援センター)
  • 松下幸生(独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の当初の目的は、わが国の成人の飲酒パターンとアルコール関連問題の実態を把握することにあったが、この調査結果を有効に利用するために、久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)の改訂も合わせて試みた。以下、実態調査とスクリーニングテストに分けて記載する。
研究方法
実態調査: 層化2段無作為抽出により、全国の3,500の成人を抽出し、平成15年6月に調査員による訪問面接調査を実施し、2,457名(72.8%)より回答を得た。調査票は面接部分と自記式部分に分かれ、前者には、飲酒パターンに加えてICD-10によるアルコール依存症等に関する質問項目、後者にはアルコール依存症等のスクリーニングテストおよび約40項目の新たな質問項目が含まれている。
スクリーニングテスト: 最終年度に新たにアルコール依存症者を対象に調査を実施した。調査票は実態調査の自記式部分とほぼ同じ内容である。調査は専門治療施設に入院している依存症者(721名)と断酒会会員(研究2~3年目に実施、最終の有効回答1,550名)の2群を対象に実施した。
結果と考察
実態調査: 飲酒経験者は男性の95.1%、女性の79.0%であり、毎日飲酒者はそれぞれ36.2%、7.5%であった。1日平均飲酒量は男性で3.7単位、女性で2.0単位であった(純アルコール10gが1単位)。ICD-10によるアルコール依存症は男性の1.9%、女性の0.1%に同定された。この割合をもとにわが国のアルコール依存症者数を推計すると81万人であった。飲酒に関係した何らかの問題行動の被害を受けた者の割合は、男性の31.3%、女性の26.3%、合計で28.7%となっていた。加害者は家庭内では父親が最も多く、家庭外では職場の人であった。
スクリーニングテスト: 外的基準として「治療施設入院者(初回のみ)+実態調査のICD-10依存症」を依存症、「実態調査の依存症以外の対象者」を正常者として、ロジスティック解析、ROC分析等から、男性用、女性用、それぞれ10項目、8項目からなるテストの試案を作成した。各質問項目を1点とし、男性用で4点、女性用で2点をcut-offにすれば、ROC分析で、既存のKAST、CAGE、AUDITのいずれより、その弁別能力が優れていることがわかった。
結論
本研究より、わが国における飲酒実態、特にアルコール関連問題の実態が明らかになった。今後、定期的な調査が望まれる。また、男性版、女性版のスクリーニングテストの試案を作成した。今後、試用を重ねてその信頼性、妥当性を検証していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-28
更新日
-