生活環境中微量化学物質に対する感受性決定に関する遺伝子群の解明

文献情報

文献番号
200401257A
報告書区分
総括
研究課題名
生活環境中微量化学物質に対する感受性決定に関する遺伝子群の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学(大学院薬学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 久下 周佐(東北大学(大学院薬学研究科))
  • 大橋 一晶(東北大学(大学院薬学研究科))
  • 黄 基旭(東北大学(大学院薬学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
33,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている代表的な化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的かつ徹底的に検索・同定すると共に、それら遺伝子から作られる蛋白質の機能解析などによって化学物質感受性決定因子を明らかにすることを目的とする。
研究方法
ほぼ全ての遺伝子を各々欠損させた酵母ライブラリーを用いて、欠損によって酵母を化学物質に対して耐性または感受性にする遺伝子を単離・同定した。また、これまでに同定された遺伝子について、その作用機構を遺伝生物学的手法を用いて検討した。
結果と考察
遺伝子欠損酵母ライブラリーを用いて、メチル水銀およびヒ素の毒性に影響を与える遺伝子群を検索し、それぞれ82種類および113種類の遺伝子を同定することに成功した。同定されたメチル水銀毒性関連遺伝子の中に、液胞への物質輸送に関わる遺伝子が多数存在したので、細胞内における液胞への物質輸送とメチル水銀毒性発との関係を検討したところ、液胞への物質輸送の中でもゴルジ体から液胞への輸送経路の1つであるCPY経路、またはエンドソームから液胞への経路がメチル水銀毒性の発現に関与することが初めて示唆された。一方、昨年度の本研究において高発現によってメチル水銀毒性を顕著に増強させることが判明した転写因子Msn2のの作用を消失させる細胞内因子を検索し、hexosamine経路の律速酵素であるGFATを同定した。Msn2高発現によるメチル水銀毒性増強作用はGFAT遺伝子の高発現によって顕著に低下し、さらにMsn2高発現によってGFAT遺伝子の発現が抑制されることが確認された。また、Msn2高発現によって発現が抑制され、かつGFAT遺伝子の発現促進に関わる因子としてSok1及びSok2を同定することに成功した。さらに我々は平成14年度に、MAPキナーゼであるHog1の高発現が酵母に顕著な亜ヒ酸耐性を与えることを明らかにしている。今年度の検討により、Hog1は亜ヒ酸の取り込みに関わる因子Fps1の存在量を減らすことによってヒ素の取り込みを抑制することが判明した。
結論
メチル水銀およびヒ素に対する感受性決定に関わる遺伝子を多数同定することに成功した。また、それら遺伝子の一部については作用機構をある程度解明することができた。今後、これら遺伝子群についてさらに詳細な検討を行うことにより、メチル水銀およびヒ素の細胞毒性発現機構の全容が解明されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200401257B
報告書区分
総合
研究課題名
生活環境中微量化学物質に対する感受性決定に関する遺伝子群の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学(大学院薬学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 久下 周佐(東北大学(大学院薬学研究科))
  • 大橋 一晶(東北大学(大学院薬学研究科))
  • 黄 基旭(東北大学(大学院薬学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている代表的な化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的かつ徹底的に検索・同定すると共に、それら遺伝子から作られる蛋白質の機能解析などによって化学物質感受性決定因子を明らかにすることを目的とする。
研究方法
遺伝子ライブラリーまたは遺伝子欠損酵母ライブラリーを用いて、酵母の化学物質に対する感受性に関与する遺伝子を単離・同定した。同定された遺伝子の一部については、その作用機構を様々な方法により解析した。
結果と考察
メチル水銀、ヒ素、トリブチルスズ、カドミウム及びパラコートに対する感受性に影響を与える遺伝子をそれぞれ110、127、24、3、47種ずつ同定することに成功した。同定された遺伝子の一部について作用機構解析を行ったところ、メチル水銀毒性に対する防御機構としてユビキチン-プロテアソーム(UP)システムが関与することが判明し、UPシステムがメチル水銀の毒性を増強させる蛋白質の分解促進または毒性を軽減する蛋白質の分解抑制によってメチル水銀毒性を低減することが明らかとなった。また、ゴルジ体→エンドソーム→液胞という物質輸送経路がメチル水銀毒性の発現に重要な役割を果たしていることが初めて明らかとなった。ヒ素の毒性に対しては浸透圧ストレス防御に関与するキナーゼHog1が耐性因子として同定され、Ssk2/22からHog1を介するシグナル伝達経路が亜ヒ酸耐性に重要な役割を担っていることが判明した。Hog1が欠損するとヒ素の取り込みが顕著に上昇し、ヒ素取り込み輸送体として作用するFps1の活性化がこの現象に重要な役割を演じていることが明らかとなった。パラコート毒性に関してはMVB sorting pathwayを構成する14の因子のどれが欠損してもパラコート感受性が増強されることが判明し、エンドソーム上での廃棄すべき蛋白質の選別がパラコート毒性の軽減に重要な役割を果たすことが明らかとなった。また、鉄還元酵素Fre1が細胞外でのパラコートからの活性酸素の産生を促進することが明らかとなった。
結論
酵母を用いたスクリーニング法が化学物質に対する感受性の決定に関わる遺伝子(蛋白質)の検索・同定に有用であることが実証された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-