ダイオキシン類の体内動態及び生体障害性の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200401251A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類の体内動態及び生体障害性の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 俊一郎(東京大学大学院(総合文化研究科生命環境科学系))
研究分担者(所属機関)
  • 福里 利夫(帝京大学 医学部)
  • 岩本 晃明(聖マリアンナ医科大学)
  • 村田 宣夫(帝京大学 医学部)
  • 浅岡 一雄(京都大学 霊長類研究所)
  • 石島 純夫(東京工業大学 生命理工)
  • 安田 峯生(広島国際大学 保健医療学部)
  • 隅田 寛(広島国際大学 保健医療学部)
  • 徳田 信子(山口大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
54,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類による健康への影響が、親世代から次世代へ及ぶことが懸念されている。ダイオキシン類のTDIは、齧歯類の実験結果を参考にして4pg/kg/dayと設定された。より妥当なTDIの設定およびより有効なダイオキシン対策をたてることを目的として、ヒトに最も近縁のアカゲザルを用いて本研究を遂行してきた。母体に2,3,7,8-TCDD(30, 300 ng/kg)を皮下投与し、F1世代の成長、生殖能、免疫能、発癌性など、TCDDの影響を長期にわたって個体レベル、遺伝子・タンパク質レベルで解析してきた。
研究方法
1. アカゲザル(5-7歳)は、株式会社新日本科学で検疫、交配を行った。2. 妊娠サルを3群(対照群、30ng/kg低投与量群、300ng/kg高投与量群)に分けて、妊娠20日にTCDDを投与し,自然分娩させて、児(F1a)を得た。F1aのTCDDの母体蓄積を考慮し、妊娠20日にTCDD 20 ng/kg(低投与量群)または200 ng/kg(高投与量群)を皮下投与し、第二産児(F1b)を得た。平成11年より長期にわたり観察し解析を行った。3.F1の生殖能(精子形成能)を精巣サイズなどから推定した。4.主要臓器、特に腎臓を病理組織学的に解析した。5.脳、肝臓、腎臓などの臓器の種々の遺伝子およびタンパク質の発現を解析した。7.免疫能は、白血球数とその分画およびリンパ球のT細胞・B細胞の割合を解析した。
結果と考察
F1a死亡例、F1bの屠殺例について、新規の「特異な腎線維化および多様な形成異常及び分化の異常」を見出した。この病変は、対照群および30ng/kg投与群では、後者の軽微な1例を除いて全く見られず、F1a死亡例300ng/kg投与群11例中6例、F1bの屠殺例11例中5例、総計で22例中11例、という高頻度で出現した。再現性があり、300ng/kg投与群に高頻度に出現しており、現行のTDIの妥当性を支持するデータであった。遺伝子、タンパク質の発現変化、免疫能の変化は低投与群、高投与群の両方に見られた。F1aオスはまだ精子形成能はないと判断し、飼育を継続している。
結論
TCDD(高投与量群)のF1世代への影響として、新規の病変である「特異な腎線維化および多様な形成異常及び分化の異常」を発見した。現行のTDIの妥当性を支持する大きな成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2005-04-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200401251B
報告書区分
総合
研究課題名
ダイオキシン類の体内動態及び生体障害性の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
久保田 俊一郎(東京大学大学院(総合文化研究科生命環境科学系))
研究分担者(所属機関)
  • 福里 利夫(帝京大学 医学部)
  • 岩本 晃明(聖マリアンナ医科大学)
  • 村田 宣夫(帝京大学 医学部)
  • 浅岡 一雄(京都大学 霊長類研究所)
  • 石島 純夫(東京工業大学 生命理工)
  • 安田 峯生(広島国際大学 保健医療学部)
  • 隅田 寛(広島国際大学 保健医療学部)
  • 徳田 信子(山口大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類による健康への影響は、直接曝露を受けた親世代(F0)のみでなく、次世代(F1)へ及ぶことが懸念されている。ダイオキシン類のTDIは、齧歯類の実験結果を基盤として平成10年に4pg/kg/dayと設定された。本研究は、より妥当なTDIの設定に役立つ研究結果を得るべく、ヒトに最も近縁のアカゲザルを用いて、母体に2,3,7,8-TCDD(30, 300 ng/kg)を皮下投与し、TCDDが、F0世代およびF1世代の生死、流死産、成長、生殖能、免疫能、発癌性へ及ぼす影響の解明を目的とした。
研究方法
1. アカゲザル(5ー7歳)は、株式会社新日本科学で検疫、飼育、交配を行った。2. 妊娠サルを3群(対照群、30ng/kg低投与量群、300ng/kg高投与量群)に分けて、妊娠20日にTCDDを投与し,自然分娩させて、児(F1a)を得た。F1aのTCDDの母体蓄積を考慮し、妊娠20日にTCDD 20 ng/kg(低投与量群)または200 ng/kg(高投与量群)を皮下投与し、第二産児(F1b)を得た。3.F1の生殖能(精子形成能)を精巣サイズから推定した。4.全ての臓器を病理組織学的に解析した。5.脳、肝臓、腎臓などの主要臓器の種々の遺伝子およびタンパク質の発現を解析した。7.免疫能は、末梢血白血球数と分画、リンパ球のT細胞とB細胞の割合をFACSにて解析した。
結果と考察
F0世代には高および低投与量群に、肝臓、胆管に増殖性病変および肝臓に循環障害が見られた。F1世代では、1例にaltered fociが見られた。また、新規の「特異な腎線維化および多様な形成異常及び分化の異常」を発見した。この病変は、対照群および低投与量群(軽微な1例を除いて)では全く見られず、F1a 高投与群11例中6例、F1bの高投与群11例中5例、総計で22例中11例、という高頻度で見出された。再現性もあり、高投与群に高頻度に出現しており、現行のTDIの妥当性を支持する結果であった。遺伝子、タンパク質の発現変化、免疫能の変化は高および低投与群の両方に見られた。F1aの雌は月経が発現しているが、雄はまだ精子形成能はないと判断し、飼育を継続することとした。
結論
TCDDはF0世代には肝臓循環障害を起こした。F1世代へは、高投与群でのみ、これまでに全く報告のない「特異な腎線維化および多様な形成異常及び分化の異常」を引き起こした。新規の病変の発見という学術的に価値のある研究成果であるに止まらず、現行のTDIの妥当性を支持する大きな発見となり、厚生労働行政および国民の健康、福祉に貢献する成果と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-22
更新日
-