血小板製剤の有効期限延長と安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200401229A
報告書区分
総括
研究課題名
血小板製剤の有効期限延長と安全性確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部(輸血・移植免疫部))
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎由基男(山梨大学医学部(臨床検査医学))
  • 浅井隆善(静岡県赤十字血液センター)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部(輸血部))
  • 宮田茂樹(国立循環器病センター(輸血管理室))
  • 佐竹正博(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子高齢化が急速に進行している日本では血小板製剤などの輸血用血液の需給バランスが近い将来に崩壊する危惧が進行している。製造された血小板製剤の8%が3日に設定された期限を過ぎ、廃棄されている。血小板製剤の有効期限を国際基準である5日あるいはそれ以上に延長することは有力な対応候補であるが、細菌汚染防止などの安全対策も必要である。
研究方法
A.細菌混入防止対策と混入細菌除去技術:採血技術の改善、白血球除去フィルターの応用、病原体不活化技術の情報収集
B.室温長期(7日)間保存血小板の機能と形態の評価:血小板活性化マーカーとズリ応力下血小板血栓形成能
C.至適保存条件の検討:高酸素透過性バッグを用いた血小板長期保存評価
結果と考察
1.グラム陰性菌であるSerratia marcescensを血小板製剤に接種実験をすると、一旦減少した後、3?10時間後に再増加する。この菌に白血球除去フィルターを用いても除去することは不可能である。Pseudomonas aeruginosaは血小板製剤中では増殖しがたい。
2.4種のグラム陽性菌(臨床分離株)はほぼ一様に急速ないしやや急速に増殖する。
3.ズリ応力下での血小板血栓形成能は保存期間と比例して低下するが、7日間でも観察される。しかし、その低下は著しいので無処置で7日に延長することは不適切である。
4.血小板の保存に伴う機能低下にはアポトーシスが関与しているので、アポトーシス阻害薬が有効である可能性が示された。
5.新しく日本で開発された高酸素透過性保存バッグを用いると、血小板機能(pH、乳酸産生、ブドウ糖消費、スワーリング、Pーセクレチン発現)が安定して保持され、7日間をこえて9日間保存も可能であることを見いだした。
結論
高酸素透過性血小板保存バッグを採用することで、成分献血由来高単位血小板製剤を9日間安定して保存が可能であることがみえてきた。細菌混入を阻止する技術や細菌混入した血小板製剤を検出する機器の導入を図ることで7日間以上に延長することが可能で、血小板製剤の安定供給に寄与するであろう。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200401229B
報告書区分
総合
研究課題名
血小板製剤の有効期限延長と安全性確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部(輸血・移植免疫部))
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎由基男(山梨大学医学部(検査医学))
  • 浅井隆善(静岡県赤十字血液センター)
  • 高松純樹(名古屋大学医学部(輸血部))
  • 宮田茂樹(国立循環器病センター(輸血管理室))
  • 佐竹正博(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子高齢化が急速に進行している日本では血小板製剤などの輸血用血液製剤の需給バランスが近い将来破綻するものと予想され、根源的な対策が必要となるであろう。その中でも、血小板製剤の有効期限を現在の3日から延長することは有力な対策の一つである。
研究方法
A.細菌混入防止技術と混入細菌の除去技術:採血初流血の排除、白血球除去フィルターの細菌除去へ応用、病原体不活化技術の情報収集
B.長期間保存血小板の機能評価:ズリ応力下血小板血栓形成能、血小板活性化指標による評価
C.至適保存条件:高酸素透過性保存バッグ、血小板保存液
結果と考察
1.血小板製剤の血液センターにおける廃棄率は1%から11%(平均5%)で、欧米の15~18%と比較すると格段に低い。血液センターの活発な需給調整によって支えられている。
2.犬を用いた実験で採血の際に10~15mLの初流血を取り分けることで、皮膚切片や塗布細菌の混入を低減できることを証明した。
3.低温増殖性のYersinia enterocoliticaの除去には白血球除去フィルターが極めて有効である。他の細菌には白血球除去フィルターによる除去は不可能である。
4.臨床分離グラム陰性菌は菌株によって増殖パターンが大きく異なる。Serratiaは半数の菌株で測定感度以下に低下した後、V字状に増殖した。Escherichia coliとPseudomonasは4株中3株で増殖しなかった。補体や抗体が関与する自己殺菌能が増殖抑制に関与していると推定される。
5.皮膚に常在するグラム陽性菌4種は菌株が異なってもほぼ一様に急速な増殖パターンを呈した。血漿による自己殺菌能は観察されなかった。
6.保存血小板の機能低下にはapoptosisが関与し、その機能保持にはapoptosis阻害剤が有効である可能性がある。
7.血小板血栓形成能は7日間経過しても観察されるが、低下するので、現在の保存条件のままで、7日間などに延長するのは不適切である。
8.高酸素透過性バッグ(PO-80)は高単位血小板を安定して7日間をこえて、9日間安定して、血小板機能が保存される。
結論
9.高酸素透過性バッグを用いることにより、高単位血小板機能を9日間保存することも可能である。細菌混入の問題を解決することで、少子高齢社会でさらに需要増大する血小板製剤の安定的供給に寄与するであろう。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-