救急・災害医療に利用可能な人工赤血球の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200401225A
報告書区分
総括
研究課題名
救急・災害医療に利用可能な人工赤血球の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
四津 良平(慶應義塾大学医学部(外科))
研究分担者(所属機関)
  • 外 須美夫(北里大学医学部(麻酔))
  • 小川 龍(日本医科大学麻酔学教室(麻酔科学))
  • 相川 直樹(慶應義塾大学医学部(救急部))
  • 堀之内 宏久(慶應義塾大学医学部(外科))
  • 小松 晃之(早稲田大学理工学総合研究センター(医工学・人工血液))
  • 大鈴 文孝(防衛医科大学校(第一内科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではヘモグロビン小胞体(Hb小胞体)およびアルブミン-ヘムの生体内での効果を研究,救急医療での用途についても検討するとともに災害医療に利用可能な保存,備蓄法を検討した。
研究方法
平成15年度の研究を踏まえ,アルブミン-ヘムの中型動物(ビーグル犬)を用いた出血性ショック時の蘇生効果やHb小胞体のウサギを用いた出血性ショック時蘇生への安全性と効果,ラットを用いた体外循環使用後の神経学的回復を検討した。また,救急医療への利用として,脳虚血モデルおよび心筋虚血モデル,皮膚血流モデルを開発し検討した。
Hbのメト化抑制系を内包したHb小胞体やアルブミン-ヘムの構造を変更した新規物質を開発し,保存,運搬を考え,パッケージングについても検討した。
結果と考察
アルブミン-ヘムは,ビーグル犬を用いた検討で出血性ショックの蘇生に有効であった。
Hb小胞体は,ウサギを用いた検討で血管透過性は亢進せず,安定した循環動態を確立できること,ラット体外循環使用時には神経学的認知行動の回復が速やかなことが明らかとなった。脳虚血モデルでは急性期に梗塞巣の縮小を認めたが慢性期では明らかでなかったが,心筋虚血モデルでは,Hb小胞体が虚血の影響を軽減させうることが示された。皮膚血流モデルの虚血領域では高酸素親和性Hb小胞体が組織の Hypoxiaを軽減させることが明らかとなった。
Hb小胞体に過酸化水素消去系(L-Tyrosine)を内包することでHbのメト化を抑制できた。アルブミン-ヘムでは構造を一部改変して工程を簡略化できた。パッケージングの基本要求性能を決定した。
結論
本年度は救急・災害医療にターゲットを絞り動物実験と物性の改良,および保存におけるパッケージングについて検討し,臨床研究に進む上で貴重な成果が得られた。出血性ショックにおけるアルブミン-ヘム,Hb小胞体の優れた蘇生効果,血管透過性の維持と酸素代謝の改善,Hb小胞体を用いた体外循環の成功と体外循環後の速やかな神経学的回復が認められ利用価値が高いと考えられた。心筋虚血に用いて回復が良好であり,酸素親和度の高いHb小胞体を虚血性疾患の治療薬として検討すべきと考えられた。
メト化抑制系を内包するHb小胞体やアルブミン-ヘムの新規物質についても生体適合性と効果を検討する必要がある。
救急医療で使用できるパッケージングを今後具体的に構成する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-