血液脳関門破綻に基づく医薬品副作用の予測系の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200401182A
報告書区分
総括
研究課題名
血液脳関門破綻に基づく医薬品副作用の予測系の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所(安全性生物試験研究センター、薬理部))
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 修一(国立医薬品食品衛生研究所(安全性生物試験研究センター、薬理部))
  • 片岡 泰文(福岡大学薬学部・医療薬学)
  • 楠原 洋之(東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は血液脳関門(BBB)機能に注目し、薬物の中枢性有害作用発現予測システム及び中枢性副作用を回避するシステムを構築する。
研究方法
BBB再構成系モデルとして、マウス脳毛細血管内皮細胞株(MBEC4)単独培養系、MBEC4と脳周皮細胞の共培養系を作製し、BBB透過性への影響をsodium fluoresceinを用い、P-gp排出機能評価はrhodamine 123を用いて検討した。ラット海馬アストロサイトとヒト周皮細胞との共培養系を構築し、カルシウムイメージング法及びレーザー共焦点法を用いて、BBB機能障害メカニズムを検討した。マウスin situ脳灌流法を用いて、脳毛細血管内皮細胞の管腔側に発現していることが明らかにされている2つのABCトランスポーター、BCRPとMRP4に焦点をあて、BCRP阻害剤およびBCRP-、MRP4欠損マウスを用いて脳移行性を野生型マウスと比較した。
結果と考察
1) BBBを構成する脳毛細血管内皮細胞、アストロサイト、周皮細胞の協調維持機構に、脳毛細血管内皮細胞産生AMおよび周皮細胞産生TGF-bが促進的に関与していた。脳内に侵入したCsAは周皮細胞のTGF-b産生を阻害し、BBB機能を破綻させると考えられた。
2) BBBを形成する両細胞が、細胞外ATPを使ってコミュニケーションを取っていた。ATPはアストロサイトのH2O2による細胞死を顕著に抑制した。ATPの保護作用は主にP2Y1受容体を介した経路で発揮されていた。
3)DHEASとmitoxantroneの血液脳関門による排泄にBCRPの寄与率は小さいことが示唆された。Mrp4を欠損した場合では、DHEASの脳内移行性が増加していることから、Mrp4が血液脳関門において異物排泄に関与していることが示唆された。
結論
血液脳関門再構成系モデルは医薬品の脳移行性およびBBB機能への影響を簡便に評価でき、中枢性有害作用の予測に有用である。周皮細胞とアストロサイトが、ATPを介してコミュニケーションを取っている。アストロサイトはATP/P2Y1受容体を介して酸化ストレスに対する抵抗性を獲得していた。
BBBにおいてBCRPが主要な排出トランスポーターではないことが示唆された。DHEASについてはMrp4によるくみ出しが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-07-01
更新日
-