数種の食用油に含まれる微量有害因子に関する研究

文献情報

文献番号
200401149A
報告書区分
総括
研究課題名
数種の食用油に含まれる微量有害因子に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 治美(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 大原直樹((財)食品薬品安全センター)
  • 加治 和彦(静岡県立大学食品栄養科学)
  • 小野嵜 菊夫(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 藤井 陽一(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 永津 明人(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 大谷 滋(岐阜大学応用生物科学部)
  • 小林 哲幸(御茶ノ水女子大学理学部)
  • 井上 誠(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 渡辺志朗(富山医科薬科大学和漢薬研究所))
  • 小川 博(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カノーラ(菜種)油、オリーブ油、硬化大豆油等、数種の食用油は脳卒中易発症性(SHRSP)ラットの寿命を異常に短縮し(対大豆油)、微量有害因子の存在を想定した。この有害因子を同定し、寿命短縮にいたる臓器障害を多面的に解析し、安全な食用油を供給することを目的としている
研究方法
寿命短縮作用を示す油を超臨界抽出法、分子蒸留法等で分画し、寿命短縮活性、臓器障害活性等を評価した。
結果と考察
超臨界抽出法によるカノーラ油の低圧抽出部(12%)は寿命短縮作用を示さず、安全な油であった。高圧抽出部、残留油には短縮活性が元の油と同程度、残っていた。各画分の植物ステロール含量と生存率の間に相関は見られなかった。分子蒸留法による分画では、カノーラ油、オリーブ油とも分画後の残留油画分の寿命短縮活性が元の油より強かった。一方、オリーブ油の蒸留油画分は強い寿命短縮活性を示したが、カノーラ油の蒸留油画分には活性が認められず、両者に微量成分の質的な差がある可能性が示された。化学的解析、生物活性:カノーラ油のトラップ画分(分子蒸留法)のみに血管腔形成阻害活性が認められ、この画分に4-butylresorcinolが同定された。食用油はトリアシルグリセロール以外に多くの微量生理活性成分を含んでいる。内分泌撹乱作用:カノーラ油、硬化大豆油は大豆油に比べ、SHRSPラットの精巣テストステロン量を有意に低下させた(内分泌撹乱作用)。カノーラ油は大豆油に比べ、血清の銅イオンとセルロプラスミンのレベルを有意に上げたが、プリオン蛋白量には影響を与えなかった。有害因子の同定と安全な油の供給のためには、さらなる研究が必要である。
結論
カノーラ油やオリーブ油の分画物間で寿命短縮活性に差があり、植物ステロール以外の有害因子の存在がより明確となった。カノーラ油の超臨界抽出法により、寿命短縮活性を示さない低圧抽出油が得られたが、収率が低く、条件検討が必要であった。カノーラ油は血小板数減少に至る組織病変や血清銅、セルロプラスミンの上昇をひきおこし、カノーラ油と硬化大豆油は内分泌撹乱作用を示した(SHRSPラット、対大豆油)。これらの結果が人に当てはまるか否かは不明であるが、動物で有害性の認められる食用油やその加工油脂を多く摂取しないよう、勧める。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200401149B
報告書区分
総合
研究課題名
数種の食用油に含まれる微量有害因子に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 治美(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 大原直樹((財)食品薬品安全センター)
  • 小野嵜菊夫(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 今泉 勝己(九州大学大学院 農学研究院)
  • 藤井陽一(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 永津 明人(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 大谷 滋(岐阜大学応用生物科学部)
  • 加治 和彦(静岡県立大学大学院生活健康科学研究科)
  • 小林 哲幸(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 井上 誠(名古屋市立大学(大学院薬学研究科))
  • 門田 重利(富山医科薬科大学和漢薬研究所)
  • 渡辺 志朗(富山医科薬科大学和漢薬研究所)
  • 小川 博(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カノーラ(菜種)油、オリーブ油、硬化大豆油等は脳卒中易発症性(SHRSP)ラットの寿命を異常に短縮し、微量有害因子の存在を想定した。この因子を同定し、臓器障害を多面的に解析し、安全な食用油を創出することを目的とした。
研究方法
油を超臨界抽出法、分子蒸留法等で分離し、生存率、組織病変等を評価した。臓器ステロイドホルモンを定量し、生殖生理に及ぼす影響を評価した。一方、種子微量成分を化学的、生化学的に解析した。
結果と考察
①超臨界抽出法によるカノーラ油の低圧抽出部(12%収率)は、寿命短縮活性を示さず、安全な油であった。高圧抽出部、残留油には活性が原油と同程度、残っていた。カノーラ油とその分画物群で血小板減少に対応した組織病変を認めた。②分子蒸留法によるカノーラ油分画物の生存率は、残留油群(収率>90%)<カノーラ油群<大豆油群、蒸留油群の順であった。オリーブ油の蒸留油画分の寿命短縮活性が最も強かった。主要植物ステロール含量と生存率の間に相関はなかった。③血管内皮細胞培養系で、カノーラ油のトラップ画分(分子蒸留法)のみに血管腔形成阻害活性が認められ、この画分に4-butylresorcinolを同定した。紅花種子のセロトニン誘導体を同定した。これらと寿命短縮活性の相関は不明である。④発現遺伝子のマイクロアレイ解析で、内分泌系に着目した。カノーラ油、硬化大豆油は大豆油に比べ、SHRSPラットの精巣テストステロン含量を低下させ(30~50%)、仔の成長に影響を及ぼした(内分泌撹乱作用)。⑤ヘキサン脱脂のカノーラ粕はヤギに対し安全であった。カノーラ油は大豆油に比べ、脳プリオン量に影響を与えなかったが、血清銅イオン、セルロプラスミンを上昇させた。
結論
カノーラ油の超臨界抽出法により、寿命短縮活性を示さない低圧抽出油が得られたが、収率が低く条件検討が必要であった。カノーラ油やオリーブ油の分子蒸留分画物間で寿命短縮活性に差があり、植物ステロール以外の有害因子の存在が明確となった。カノーラ油は血小板数減少に至る組織病変や血清銅、セルロプラスミンの上昇をひきおこし、カノーラ油と硬化大豆油は内分泌撹乱作用を示した(SHRSPラット、対大豆油)。これらに基づき、人の健康に及ぼす影響を考察した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-