筋萎縮性側索硬化症の病因・病態に関わる新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400845A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の病因・病態に関わる新規治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部生理学)
  • 野本 明男(東京大学大学院医学系研究科微生物学)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 阿部 康二(岡山大学医学部神経内科)
  • 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科分子組織再生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は神経難病のなかでも最も過酷な疾患とされる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因・病態解明を行うとともにその知見に基づいたALSの治療法を新たに開発することである。
研究方法
1)ALSの運動ニューロン死の分子病態を解明するため、患者脊髄の運動ニューロンで減少しているAMPA受容体GluR2 RNA編集に関る酵素ADAR2 mRNAをヒト脳で検討した。2)新規の神経栄養因子である肝細胞増殖因子(HGF)のALS治療における有用性を確立するため、発症後のALS Tgラットに対してHGFの髄腔内投与を行い、その治療効果を臨床的および組織学的に確かめた。3)将来的なALSの遺伝子治療に向けてのウイルスベクターの開発を行っている。なかでもポリオウイルスRNAにHGF mRNAを挿入して培養細胞に感染導入し、RNAレプリコン活性を測定した。一方、神経幹細胞移植療法の検討ではマウスのES細胞から運動ニューロンを誘導し、その細胞をALS Tgラットの腰髄へ移植した。
結果と考察
本年度の成果としては、1)ALS患者の運動ニューロン死にはAMPA受容体GluR2のRNA編集率の低下が関与しており、その機序としてはRNA編集酵素のADAR2低下が推定された。2)ALSの新規治療薬として注目されているHGFをALS発症後のALSラットに持続髄腔内投与療法を行い、明らかに延命効果があることが示された。3)ポリオウイルスは運動ニューロンに特異的に感染し複製するため、ALS遺伝子導入治療のベクターとして有力視されている。ポリオウイルスの細胞毒性を担う2Aプロテアーゼ領域を欠落させHGF mRNAを組み込んだウイルスが外来mRNAを発現させる条件を検討した。マウスES細胞から運動ニューロン前駆細胞への誘導を可能にした。これらの細胞はALS Tgラットの脊髄に移植したところ生着し、その一部はChAT陽性細胞へ分化した。
結論
本研究班はALSの病因論としてSOD1変異説を最も有力なものと考え、遺伝子導入ALSラットモデルを新たに作製して治療研究に応用している。HGFをこのALSラットに持続的に髄腔内投与をして明らかな延命効果が確かめられ、今後のALSの臨床応用が期待される。また、将来的な遺伝子治療や神経幹細胞移植治療にとって重要な基礎データが得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400845B
報告書区分
総合
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の病因・病態に関わる新規治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部生理学)
  • 野本 明男(東京大学大学院医学系研究科微生物学)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 阿部 康二(岡山大学医学部神経内科)
  • 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科分子組織再生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経難病のなかでも最も過酷な疾患とされる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、その病因・病態の解明と新規治療法の開発が切望されている。本研究班の目的はALSの病因・病態解明を行うとともにその知見に基づいたALSの治療法を新たに開発することである。
研究方法
ALSの病因・病態は不明であるが、Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)遺伝子異常説が重要であり、変異SOD1を導入したALSラットも作製された。以下のような治療研究を行っている。1)ALSの患者脊髄からの単一の運動ニューロンを取り出し、AMPA受容体のGluR2のRNA編集率の異常を検討した。2)肝細胞増殖因子(HGF)は運動ニューロンに対し強い細胞保護作用を持ち、次世代のALS治療薬として期待されている。ALSの臨床応用を見据えてALSラットに症状発症後にHGFの髄腔内投与を行い、その治療効果を確かめた。3)ポリオウイルスの運動ニューロンへの特異的感染性を利用してALS遺伝子治療におけるベクター機能を検討した。4)神経幹細胞移植治療を目指し胚性幹細胞(ES細胞)から運動ニューロンを誘導し、それらをALSラットの腰髄へ移植した。5)ALS患者に即応出来る治療薬の開発を検討した。
結果と考察
1)ALS における運動ニューロンでは、AMPA受容体GluR2のRNA編集率が低下していることが単一運動ニューロンの解析から明らかにされた。2)ALSの新規治療薬の可能性が注目されているHGFをALS Tgラットに症状発症後に投与しても明らかな延命効果が認められた。3)細胞毒性を担う2Aプロテアーゼ領域を欠落させHGF mRNAを組み込んだポリオウイルスが作製された。4)マウスES細胞から運動ニューロンの前駆細胞への誘導が可能になり、これらの細胞をALSラットの脊髄に移植したところ生着し、その一部はChAT陽性細胞へ分化した。5)既存の薬剤のなかでもエダラボンがALS患者の症状改善に有用である可能性が示された。
結論
本研究班は変異SOD1に遺伝子導入ALSラットを世界に先駆けて作製し、このALSラットへ髄腔内HGF投与を行い発症後からでも延命効果を示すことを明らかにした。将来的なALS治療を目指しポリオウイルスベクターの作製や神経幹細胞移植実験を行っている。

公開日・更新日

公開日
2005-08-03
更新日
-