進行性腎障害に対する腎機能維持・回復療法に関する研究

文献情報

文献番号
200400844A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性腎障害に対する腎機能維持・回復療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
林 松彦(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 猿田 享男(慶應義塾大学医学部)
  • 下条 文武(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 佐々木 成(東京医科歯科大学大学院医学部)
  • 川村 哲也(東京慈恵会医科大学)
  • 今井 圓裕(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 名取 泰博(国立国際医療センター研究所)
  • 西中村 隆一(熊本大学発生医学研究センター)
  • 菱川 慶一(東京大学付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、進行性腎障害の進行抑止と腎機能維持、末期腎不全患者のための腎再生の可能性を検討するために立案され、進行性腎障害進行促進・抑制因子の同定と腎再生のための幹細胞同定、分化誘導・再生因子探索を行なった。
研究方法
進行性腎障害進行促進・抑制因子の同定では、IgA腎症症例の遺伝因子解析糖尿病ラットにおけるプロレニンの役割、尿細管細胞の形質変換の役割を各々検討した。腎機能回復・再生のための幹細胞同定では、骨髄間葉系幹細胞をラット胎児尿管芽に注入し、その分化能を見た。また、ES細胞の腎細胞への分化誘導を試みるとともに、SP細胞と骨髄細胞由来内皮前駆細胞を用いて急性腎不全動物の細胞療法を行った。腎機能再生のための分化・再生因子として、Sall 1ファミリー、その他の検討を行った。
結果と考察
IgA腎症に関連する遺伝子座位IGAN1との連関を決定するとともに、幾つかの関連遺伝子を明らかとした。また、腎障害の進行因子として、尿細管細胞のマクロファージ様細胞への形質変換が重要であることを示し、糖尿病腎症の進展にプロレニンとその受容体が中心的役割を果たすことを証明した。腎機能回復・再生のための幹細胞同定では、骨髄間葉系幹細胞は、ラット胎児の尿管芽発芽部に注入すると、その後尿管芽に組み込まれ後腎まで発達し、種々の腎構成細胞にまで分化することが確認された。SP細胞の腎臓内投与が、cisplatinによる急性腎不全モデルの回復を早め、骨髄細胞由来内皮前駆細胞を急性腎炎モデル動物に投与すると改善促進効果が示され、両者の細胞療法への応用が期待される結果であった。また、ES細胞は、その培養条件により、尿細管、糸球体特異遺伝子を発現し、尿細管様構造を形成することが示された。糸球体・間質再構築のための分化・再生因子として、Sall 1、Sall 4、Jagged-1-Notch系がいずれも重要な因子であることが示された。
結論
以上の結果より、糖尿病腎症、IgA腎症の新たな治療標的が同定された。また、腎機能再生の原基として骨髄細胞、ES細胞の可能性が、細胞療法にSP細胞と骨髄由来内皮前駆細胞の有用性が各々示された。分化・再生因子としても幾つかの候補が見出された。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200400844B
報告書区分
総合
研究課題名
進行性腎障害に対する腎機能維持・回復療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
林 松彦(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 猿田 享男(慶應義塾大学医学部)
  • 下条 文武(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 佐々木 成(東京医科歯科大学大学院医学部)
  • 川村 哲也(東京慈恵会医科大学)
  • 今井 圓裕(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 名取 泰博(国立国際医療センター研究所)
  • 西中村 隆一(熊本大学発生医学研究センター)
  • 菱川 慶一(東京大学付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、進行性腎障害の進行抑止と腎機能維持、末期腎不全患者のための腎再生の可能性を検討するために立案され、進行性腎障害進行促進・抑制因子の同定と腎再生のための幹細胞同定、分化誘導・再生因子探索を行なった。
研究方法
進行性腎障害進行促進・抑制因子の同定では、IgA腎症を中心として、遺伝因子解析を行うとともに、尿細管細胞の形質変換の役割、プロレニンおよびレニン・アンジオテンシン系の役割を検討した。腎再生のための幹細胞として、骨髄間葉系幹細胞、腎SP細胞、ES細胞、骨髄由来内皮前駆細胞の有用性を各々検討した。さらに、腎再生のための分化誘導・再生因子の探索を行った。
結果と考察
腎障害進行因子の遺伝因子解析により、IGAN1、mucin protein 20、セレクチン、ウテログロビン、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン変換酵素、アルドステロン合成酵素、PPARγなどの各遺伝子多型が、腎障害との様々な関連を示し、これらの総合的解析が、各症例のテーラードメディスンへの道を開くものと考えられた。また、腎間質障害の進行抑制因子としてアンジオテンシン変換酵素2型、clusterinの重要性を同定し、糖尿病腎症の進展にプロレニンとその受容体が中心的役割を果たすことを証明したた。さらに、間質障害進行因子として、尿細管細胞のマクロファージ様細胞への形質変換が重要であることを示した。新たに開発した胎児、後腎組織のリレーカルチャー法により骨髄間葉系幹細胞の分化能を検討し、尿細管細胞、糸球体上皮細胞への分化能を確認した。ES細胞から糸球体上皮、メサンギウム、集合管の各細胞が誘導されることも確認した。骨髄由来血管内皮前駆細胞、腎SP細胞による細胞療法が急性腎障害の回復を促進するが、移植実験などによりSP細胞自体は腎細胞に分化しないことが明らかとなった。腎再生のための分化誘導・再生因子探索では、分化誘導因子としてSall 1、Sall4、MTF-1が、急性腎不全からの腎再生にはLIF、Wnt-4、Ets 1、Jagged-1などが、各々重要な因子であることが示された。
結論
進行性腎障害治療の新たな標的遺伝子が同定され、腎臓再生の原基として骨髄細胞、SP細胞、ES細胞の可能性が示された。また、分化誘導・再生因子も幾つかの候補が見出された。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-