アミロスフェロイド仮説によるアルツハイマー病病態解明と臨床応用に関する研究-高等動物モデル構築と生体リアルタイム観測法開発によるアプローチ

文献情報

文献番号
200400774A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロスフェロイド仮説によるアルツハイマー病病態解明と臨床応用に関する研究-高等動物モデル構築と生体リアルタイム観測法開発によるアプローチ
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
星 美奈子(株式会社 三菱化学生命科学研究所(研究部門))
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 和也(東京大学 大学院薬学系研究科)
  • 村松 慎一(自治医科大学 内科学講座神経内科部門)
  • 金城 政孝(北海道大学 電子科学研究所)
  • 佐藤 一紀(福岡女子大学 人間環境学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、強力な神経毒性を持つアミロスフェロイドを入り口に、異分野横断による新たな手法開発から、アルツハイマー病病態解明と臨床応用展開を目指す。
研究方法
倫理面に配慮し(1)特異的抗体作製、剖検脳検証、毒性中和抗体作製、(2)Aβ突然変異体合成とアミロスフェロイド形成能検証、(3)蛍光標識Aβ合成と蛍光相関分光法(FCS)による凝集プロセス可視化、(5)FCSによる高感度抗原抗体反応検出系構築、(6)サル脳へのアミロスフェロイド単回注入、(7)サルES細胞の神経細胞分化誘導法開発、(8)アデノ随伴ウィルス (AAV)による神経遺伝子導入ベクター開発を行った。
結果と考察
(1)モノマーや線維に反応しない、アミロスフェロイド特異的ポリクローナル抗体を得た。抗体は患者脳を特異的に染色し、類似凝集体が生体にある可能性が示された。毒性中和抗体も確立し、今後治療への展開が期待される。(2)家族性原因遺伝子arctic, tottori変異Aβもアミロスフェロイドを形成し毒性を発揮した。アミロスフェロイド形成は生理的環境下が至適であり、しかも環境を問わず毒性は10-15 nmのアミロスフェロイド存在量と相関した。従って、アミロスフェロイド形成機構の解明は、生体での発症機序に迫る有効な手段である。Aβ部分配列を合成し、アミロスフェロイド形成に必要な配列を決定し、構造変化の解明を着実に進めている。(3)アミロスフェロイド形成を阻害せずに蛍光標識し、FCSにより凝集プロセスを観察可能であることを示した。(4)特異的抗体による高感度ELISA系を構築した。FCSにより2桁以上高感度化が可能であることを示した。今後、生体試料での早期診断、治療用毒性中和モノクローナル抗体の作製などに非常に有効である。(5)まだ比較的若いサル脳への単回注入では、特に顕著な影響は検出出来ず、サルの年齢、投与方法など検討中である。(6)サルES細胞から効率よく神経細胞を分化誘導する手法を開発した。(7)特性が異なるAAVベクターを構築した。
結論
(1)アミロスフェロイド類似構造体がヒト脳にある可能性が高まった。(2)毒性は常にアミロスフェロイドに相関するため、その形成と毒性発現機序の解明は病態理解に非常に有効である。(3)FCSによるリアルタイム凝集観測法構築の可能性が見えた。(4)サルモデルを用いた神経毒性発現機序の解明に着手した。

公開日・更新日

公開日
2005-11-07
更新日
-