筋萎縮性側索硬化症の最早期病変を求めて:運動ニューロンにおける蛋白合成系の異常と治療法開発の試み

文献情報

文献番号
200400772A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の最早期病変を求めて:運動ニューロンにおける蛋白合成系の異常と治療法開発の試み
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小柳 清光((財)東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤日出巳((財)東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所)
  • 水谷俊雄(東京都立神経病院検査科)
  • 渡部和彦((財)東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ALS脊髄・脳幹運動ニューロンの蛋白合成系に焦点を合わせ、新たな視点から弧発性および家族性ALSの病態究明と治療法の開発を目指す。
I. ALS前角細胞における蛋白合成系の異常と細胞脱落との関連の解明。
II. 家族性ALSの新規原因遺伝子ALS2/ALSIN欠失による運動ニューロン脱落メカニズムの解析。
III. 新規の神経栄養因子および組み換えウイルス、移植による細胞治療法の開発。
IV. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)で観察される痴呆症状の形態学的責任病巣の検討。
研究方法
I. ALSの発症メカニズムの追求:
(1)ALSの前角細胞における、蛋白合成系「最上流」と考えられるリボゾーム(r)RNA遺伝子の転写活性減少メカニズムを解明する。これと、蛋白合成系「下流」のrRNAの量、粗面小胞体の変化、Golgi小体の断片化、ユビキチン化封入体などが「一連の」変性であるか検討する。
(2)家族性ALSのALS2/ALSIN蛋白と結合して運動ニューロン変性と係わると考えられる蛋白を同定する。
II. モデル動物を用いた治療法の開発:
成体ラット顔面神経引き抜き損傷モデルと前角細胞軸索損傷モデルを用いて、脱落を阻止する有効な新規組み換えウイルス、栄養因子を見出す。
III. ALS-痴呆:
大脳側頭葉を免疫組織学的に解析し、痴呆の発症機構を追求する。
結果と考察
脊髄前角細胞におけるリボゾーム(r)RNA遺伝子転写活性に関し、早発老化klothoマウス前角細胞におけるKlotho蛋白形成不全とrRNA遺伝子の転写活性の減少、胞体内RNAおよび粗面小胞体の減少を見出した。ALSとの関連性を指摘した。
家族性ALS2/ALSINにおいて、ALS2蛋白と結合する蛋白が微小管結合活性を持つ蛋白であり、軸索障害の可能性を指摘した。
ラット前角細胞軸索障害モデルは、酸化型ガレクチン-1投与で障害が形態学的にも機能的にも有意に回復した。
痴呆の無いALS7症例中1例に海馬支脚prosubiculumの変性所見を認めた。
結論
ALSにおけるklotho遺伝子検索の必要性とALS研究モデルとしてのklothoマウスの有用性を報告した。ALS2蛋白は微小管結合活性を持つ既知の蛋白と結合することを突き止めた。酸化型ガレクチン-1は前角細胞障害に有効である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-09
更新日
-