外傷性中枢神経障害のリハビリテーションにおける 科学的解析法と治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200400745A
報告書区分
総括
研究課題名
外傷性中枢神経障害のリハビリテーションにおける 科学的解析法と治療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 壽(大阪大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋津 岳士(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 田中 裕(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 鍬方 安行(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 塩﨑 忠彦(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 田崎 修(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 種子田 護(近畿大学医学部脳神経外科学)
  • 吉峰 俊樹(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 畑澤 順(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 池尻 義隆(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 森 泰丈(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、超急性期治療終了直後(受傷後1週間)から中枢神経系の賦活と下肢運動機能の温存に主眼を置いた早期リハビリテーションを積極的に開始し、急性期治療終了後(受傷1ヵ月)の後期リハビリテーションに繋ぐことによって、重症頭部外傷患者の中枢神経系機能予後の飛躍的な改善を図ることを目指している。
研究方法
1. 意識障害患者の下肢筋肉の6週間にわたる萎縮経過。2.重症頭部外傷後に長期間植物状態を呈している患者の長期予後追跡調査。3. 上記多施設患者での髄液生化学的検査。4. 受傷後1ヶ月の時点で植物状態を呈している重症頭部外傷患者35例の長期予後追跡調査。5. Hybrid PETによって得られる機能画像をMRIやCTなどの形態画像と重ね合わせるソフトウェアの開発。6. 神経心理学的検査が可能であった重症頭部外傷患者39例を対象とした高次脳機能の推移。
結果と考察
1. 6例での計測では、発症時の断面積を100%とすると、発症から6週間の経過で下肢筋肉の総てが64~71%にまで断面積が減少した。下肢筋肉に電気刺激を加えた場合の筋萎縮予防効果を明らかにする研究を開始し、現時点で1例(2肢)が終了した。電気刺激を加えている期間は4%以内の萎縮に留めることに成功した。2. 現時点で19例がエントリーしており、引き続きエントリーを継続する。3. 14例の髄液検査では、1年以内に意識の回復した患者では、受傷1ヶ月後の髄液中IL-1β濃度が意識回復の遷延している患者に対して有意に低かった(p<0.05)。4.『受傷から3年間全く便意を訴えなかった症例が、3年4ヵ月後に突然便意を訴えて便器で排泄できるようになった』事実が判明した5. Hybrid PETによって得られる機能画像をMRIやCTなどの形態画像と重ね合わせるソフトウェアを開発した。6.何らかの高次脳機能障害が84%もの高頻度で生じていた。追跡調査が可能であった18例のうち、8例が完全回復、6例が一部回復、4例は経過中全く改善を認めなかった。基礎研究では、
結論
『意識障害患者では、随意運動が困難な下肢は、断面積で計算すると6週間の経過で受傷時の約65%にまで萎縮する』ことが判明した。時期を失することなく下肢廃用性萎縮を予防するための早期リハビリテーションを開始するべきである。筋萎縮の予防に関しては、『廃用性萎縮による下肢筋肉萎縮は電気刺激で十分に予防できる』という手ごたえを得ており、『この方法を用いて早期から計画的にリハビリテーションを施行すれば、意識障害患者の下肢廃用性萎縮を十分に予防できる』と我々は考えている。

公開日・更新日

公開日
2005-05-26
更新日
-