自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子の解明

文献情報

文献番号
200400727A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所(疾病研究第三部))
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 祐士(三重大学 医学部)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 氏家 寛(岡山大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 稲田 俊也(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 白川 治(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 今村 明(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、自殺者数が年間3万人以上に増加しており、それによって失われる寿命や経済損失は甚大である。したがって、自殺や自殺を生じやすい精神疾患への対応策を探ることは、厚生労働行政における緊急な重要課題である。本研究は、自殺を惹起する精神疾患として統合失調症、躁うつ病、薬物依存症などをとりあげ、感受性遺伝子を見出し、新しい診断・治療薬の開発に役立つ知見を得ることを目的とする。
研究方法
上記精神疾患患者のゲノムDNAを多数収集し、神経発達に関与する遺伝子、神経伝達物質を制御する遺伝子などを候補として、遺伝子変異と疾患やその臨床症状との関連を検討した。感受性遺伝子であることが示唆されたものの一部については、細胞生物学的手法による機能解析を行った。また、遺伝子発現解析からの候補遺伝子の検索も行った。
(倫理面への配慮)三省合同の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を遵守した研究計画書を作成し、研究施設での倫理委員会の承認を受けた。試料提供者への説明とインフォームド・コンセント、個人情報の厳重な管理などを徹底した。
結果と考察
今年度の遺伝子解析研究によって、自殺行動や自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子として、BDNF(双極性障害との関連)、GMIP (うつ病)、AKT1(統合失調症、覚醒剤使用障害)、GABRA5(双極性Ⅰ型障害)、chromogranin A(統合失調症)、COMT (自殺既遂)、14-3-3ε(自殺既遂)、NT-3 (統合失調症)、CNTF (統合失調症)が同定された。これらのうち、BDNFやGMIP遺伝子については細胞生物学的な機能解析を行い、発病脆弱性を与える対立遺伝子は遺伝子転写活性を低下させる可能性を示唆するエビデンスを得た。また、遺伝子発現解析により、profilin 1やAPOL1遺伝子が統合失調症の発病に関与している可能性を支持するエビデンスを得た。今回見出されたこれらの分子は新しい診断・治療を開発する際の標的分子であると考えられる。
結論
自殺行動や自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子を同定した。特に、BDNFと双極性障害との関連についてのエビデンスは強く、病態メカニズムの一端を解明したと考えられる。他の遺伝子についても、精神疾患や自殺行動との関連をさらに確認すると共に、機能解析を進めることにより新しい診断・治療法の開発を進める価値がある。

公開日・更新日

公開日
2005-05-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200400727B
報告書区分
総合
研究課題名
自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所(疾病研究第三部))
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 祐士(三重大学 医学部)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 氏家 寛(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 稲田俊也(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 白川 治(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 今村 明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、自殺者数が年間3万人以上に増加しており、自殺や自殺を生じやすい精神疾患への対応策を探ることは、厚生労働行政における緊急課題である。本研究は、自殺を惹起する精神疾患として統合失調症、躁うつ病、薬物依存症などをとりあげ、感受性遺伝子を見出し、新しい診断・治療薬の開発に役立つ知見を得ることを目的とする。
研究方法
上記精神疾患患者のゲノムDNAを多数収集し、神経発達に関与する遺伝子、神経伝達物質を制御する遺伝子などを候補として、遺伝子変異と疾患やその臨床症状との関連を検討した。感受性遺伝子であることが示唆されたものの一部については、細胞生物学的手法による機能解析を行った。また、遺伝子発現解析からの候補遺伝子の検索も行った。
(倫理面への配慮)三省合同の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を遵守した研究計画書を作成し、研究施設での倫理委員会の承認を受けた。試料提供者への説明とインフォームド・コンセント、個人情報の厳重な管理などを徹底した。
結果と考察
感受性遺伝子として、Dysbindin (統合失調症との関連)、BDNF(双極性障害)、p75NTR(うつ病、自殺企図)、chimerin 2(統合失調症)、GMIP (うつ病)、BCR(双極性障害)、HTR4(統合失調症、覚醒剤使用障害)、SLC6A4(強迫性障害)、AKT1(統合失調症、覚醒剤使用障害)、DRPO-2(統合失調症)、FZD3(統合失調症)、GABRA5(双極性Ⅰ型障害)、chromogranin B(統合失調症)、chromogranin A(統合失調症)、COMT (自殺既遂)、14-3-3ε(自殺既遂)、profilin 1(統合失調症)、APOL1(統合失調症)、NT-3 (統合失調症)、CNTF (統合失調症)が同定された。DysbindinやBDNFに関しては機能解析も行い、病態を説明しうるエビデンスを得た。
結論
自殺行動や自殺を惹起する精神疾患の感受性遺伝子を多数同定した。統合失調症の遺伝子dysbindinについては機能解析によりグルタミン酸仮説と合致する機能をもつことを示した。また、BDNFと双極性障害との関連についても強いエビデンスを得ており、病態メカニズムの一部を解明したと考えられる。他の遺伝子についても、精神疾患や自殺行動との関連をさらに確認すると共に、機能解析を進めることにより新しい診断・治療法の開発を進める価値がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-