自閉症の原因解明と予防、治療法の開発 -分子遺伝・環境・機能画像からのアプローチ-

文献情報

文献番号
200400725A
報告書区分
総括
研究課題名
自閉症の原因解明と予防、治療法の開発 -分子遺伝・環境・機能画像からのアプローチ-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 進昌(東京大学医学部附属病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木司(東京大学保健管理センター)
  • 難波栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 松本英夫(東海大学医学部内科学系精神科学部門)
  • 金生由紀子(北里大学大学院医療系研究科発達精神医学)
  • 定松美幸(滋賀医科大学精神科神経科)
  • 原仁(横浜市中部地域療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は自閉症の原因解明と予防・治療法開発を目的に、分子遺伝・機能画像・環境要因の各分野から複数施設共同でアプローチするものである。この場合、複数施設は互いに有機的に連携して、臨床基礎を問わず、検体やデータを共有して目標達成を目指すこととしている。児童精神科の大学施設としては歴史的にみて最右翼といえる東京大学と東海大学のほかに、協力施設として三重県立小児診療センター・あいち小児保健医療総合センターを擁している本研究チームは、自閉症例を集める研究チームとしては、わが国最大の規模をこの3年間で備えるに至ったものと自負している。
研究方法
1)同胞発症例や、双生児例のほぼ全ての家系についてデータを収集した。
2)家族内多発症例についてまずデータを得た。
3)公開シンポジウム「自閉症の原因を探るーよりよい治療への手がかりを求めてー」を開催した。
結果と考察
1)分子遺伝研究では、既知の候補遺伝子やゲノムインプリンテイング遺伝子の解析や三塩基リピート数の解析を行ってきた。相関が示唆されたいくつかの遺伝子について、さらに数を増やして検索中である。2)脳画像による認知機能の研究では、構造的MRI、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)、事象関連電位(ERP)、脳磁図(MEG)を用いた多角的なマルチモダリティー解析を高機能自閉症を主な対象として解析を行っている。まだ症例数を増やしている段階ではあるが、社会性やコミュニケーションにかかわる脳部位のネットワークに障害があるという予備的結果を得ている。3)胎内環境要因の研究では、後向き調査として自閉症児の新生児甲状腺機能と環境ホルモン量の調査を、新生児スクリーニング検査結果の参照と臍の緒からの抽出・測定法開発によって可能とした。予備的ではあるが、新生児TSHとIQが逆相関するとの結果を得ている。さらに乳歯中の水銀・鉛などの重金属測定を行っている。また動物モデルとして授乳期の低甲状腺状態による多動・学習障害モデルにおける小脳遺伝子発現の遅れを見出した。
結論
研究に対する偽りのない社会的理解の形成のために、まず当事者・家族を始めとする自閉症関係者に、本研究の目的や進行状況をはじめ、自閉症の生物学的研究の内容と意義を伝えることを目指した。上記のような公開シンポジウム開催や、研究紹介のパンフレット配布などを通じて、日本自閉症協会その他、家族や当事者の団体との連携にも成功しつつあり、わが国で自閉症の生物学的研究を推進する土台作りに大きな一歩を踏み出したものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400725B
報告書区分
総合
研究課題名
自閉症の原因解明と予防、治療法の開発 -分子遺伝・環境・機能画像からのアプローチ-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 進昌(東京大学医学部附属病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木司(東京大学保健管理センター)
  • 難波栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 松本英夫(東海大学医学部精神科学部門)
  • 金生由紀子(北里大学大学院医療系研究科発達精神医学)
  • 定松美幸(滋賀医科大学医学部精神医学)
  • 原仁(横浜市中部地域療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は自閉症の原因解明と予防・治療法開発を目的に、分子遺伝・機能画像・環境要因の各分野から複数施設共同でアプローチするものである。この場合、複数施設は互いに有機的に連携して、臨床基礎を問わず、検体やデータを共有して目標達成を目指すこととしている。児童精神科の大学施設としては歴史的にみて最右翼といえる東京大学と東海大学のほかに、協力施設として三重県立小児診療センター・あいち小児保健医療総合センターを擁している本研究チームは、自閉症例を集める研究チームとしては、わが国最大の規模をこの3年間で備えるに至ったものと自負している。
研究方法
1)三重県立小児心療センターでは同胞発症例や、双生児例のほぼ全ての家系についてデータを収集した。2)あいち小児保健医療総合センターでは家族内多発症例についてまずデータを得た。3)その上で公開シンポジウム「自閉症の原因を探るーよりよい治療への手がかりを求めて」を開催した。
結果と考察
1)分子遺伝研究では、既知の候補遺伝子やゲノムインプリンテイング遺伝子の解析や三塩基リピート数の解析を行ってきた。相関が示唆されたいくつかの遺伝子について、さらに数を増やして検索中である。2)脳画像による認知機能の研究では、構造的MRI、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)、事象関連電位(ERP)、脳磁図(MEG)を用いた多角的なマルチモダリティー解析を高機能自閉症を主な対象として解析を行っている。まだ症例数を増やしている段階ではあるが、社会性やコミュニケーションにかかわる脳部位のネットワークに障害があるという予備的結果を得ている。3)胎内環境要因の研究では、後向き調査として自閉症児の新生児甲状腺機能と環境ホルモン量の調査を、新生児スクリーニング検査結果の参照と臍の緒からの抽出・測定法開発によって可能とした。予備的ではあるが、新生児TSHとIQが逆相関するとの結果を得ている。さらに乳歯中の水銀・鉛などの重金属測定を行っている。また動物モデルとして授乳期の低甲状腺状態による多動・学習障害モデルにおける小脳遺伝子発現の遅れを見出した。
結論
研究に対する偽りのない社会的理解の形成のために、まず当事者・家族を始めとする自閉症関係者に、本研究の目的や進行状況をはじめ、自閉症の生物学的研究の内容と意義を伝えることを目指した。上記のような公開シンポジウム開催や、研究紹介のパンフレット配布などを通じて、日本自閉症協会その他、家族や当事者の団体との連携にも成功しつつあり、わが国で自閉症の生物学的研究を推進する土台作りに大きな一歩を踏み出したものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-