アレルギー疾患の遺伝要因と環境要因の相互作用に関する研究

文献情報

文献番号
200400713A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の遺伝要因と環境要因の相互作用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
出原 賢治(佐賀大学医学部分子生命科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 白川 太郎(京都大学大学院健康要因学講座)
  • 柳原 行義(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 近藤 直実(岐阜大学医学部小児病態学講座)
  • 田中 敏郎(大阪大学医学部分子病態内科講座)
  • 中尾 篤人(山梨大学大学院免疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患の遺伝要因は多因子でありSNPの中に含まれている。しかし、近年のアレルギー疾患の増大は環境要因の変化により、遺伝要因単独によるアレルギー疾患発症の予知には限界がある。一方で、感染症の減少、食生活の変化、大気汚染などの環境要因に対する個人間における感受性の違いについては全く解明されていない。このため、本研究では、両要因の解析を組み合わせて、双方の相互作用について解明を進めることを目指す。
研究方法
遺伝要因については、AhR、TGF-beta1、Blys、APRILの4遺伝子について、650例の正常者、350例の小児喘息患者、480例の成人喘息患者を対象としてさまざまな臨床病態との相関を解析するとともに、IL-18とIL-12p40遺伝子のSNPについても解析を行った。環境要因については、ダイオキシンの受容体であるAhRとアレルギー疾患との関連性、アレルギー患者における樹状細胞の性状、IL-10産生能、経口投与によるTGF-betaのアレルギー反応への影響について、さらに、各種フラボノイドの抗アレルギー反応効果についても解析を進めた。
結果と考察
(1)AhR、TGF-beta1、IL-18、IL-12p40遺伝子上のSNPと小児喘息、成人喘息患、非アトピー性喘息に相関は認めたが、Blys、APRIL遺伝子上のSNPとは認めなかった。
(2)IL-4はAhRを誘導してダイオキシンに対する感受性を亢進した。一方、IL-4によるIgE産生、CD23発現にはダイオキシンは影響しなかった。
(3)アレルギー患者ではミエロイド系樹状細胞でTLR3の発現低下、poly I:CによるBlyS/APRIL発現低下、LPS刺激による単核球からのIL-10産生低下、Th1/2分化の分散が生じていた。
(4)経口的TGF-betaのマウスへの投与は血中IgE産生、皮膚炎形成を抑制した。
(5)種々のフラボノイド類の修飾化合物の中でluteolinが最も強い抗アレルギー活性を示した。
結論
遺伝要因に関して新たなアレルギー疾患の発症あるいは病態に関連するSNPを同定した。また、環境要因に関しては、ダイオキシンとアレルギー疾患との関連性を明らかにするとともに、衛生仮説に基づいた抑制性サイトカインの作用について検討した。さらに、抗アレルギー効果を持つ食物成分であるフラボノイドについても解析を進めた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400713B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー疾患の遺伝要因と環境要因の相互作用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
出原 賢治(佐賀大学医学部分子生命科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 白川 太郎(京都大学大学院医学研究科)
  • 柳原 行義(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 近藤 直実(岐阜大学医学部小児病態学講座)
  • 田中 敏郎(大阪大学大学院分子病態内科学講座)
  • 中尾 篤人(山梨大学大学院免疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー疾患の遺伝要因は多因子でありSNPの中に含まれる。しかし、アレルギー疾患の増大は環境要因の変化により、遺伝要因単独によるアレルギー疾患発症の予知には限界がある。一方で、感染症の減少、食生活の変化、大気汚染など環境要因に対する個人間における感受性の違いについては全く解明されていない。このため、本研究では両要因の解析を組み合わせて、双方の相互作用について解明を進めることを目指す。
研究方法
環境要因に関しては、ダニアレルゲン、ダイオキシン、デイーゼル微粒子、ウイルス感染症、母乳、食物中に含まれるフラボノイドを取り上げて解析を行った。遺伝要因に関しては、AhR、TGF-beta1を環境因子の影響を受ける可能性を持つ遺伝子として取り上げて理研のSNP情報をもとに遺伝学的解析を行うとともに、beta-アドレナリン受容体、IL-18、IL-12p40遺伝子のSNPについても解析を行った。さらに、転写されたRNAに置換が生じるRNA編集の影響をIL-12シグナル経路についても解析を行った。
結果と考察
(1)IL-4/IL-13はSCCA分子の産生を介してダニアレルゲンの生物活性を阻害した。
(2)IL-4はAhRを誘導してダイオキシンに対する感受性を亢進した。一方、IL-4によるIgE産生、CD23発現にはダイオキシンは影響しなかった。
(3)ダニアレルゲンとディーゼル排気粒子はTGF-beta作用を増強した。
(4)RSウイルス感染症はIL-12レセプターbeta2鎖のRNA編集を増強した。
(5)母乳中に含まれるTGF-betaの経口投与は、血中IgE産生、皮膚炎形成を抑制した。
(6)フラボノイドは好塩基球からのIL-4 とIL-13産生を強く抑制した。
(7)AhR、TGF-beta1、beta2アドレナリン受容体、IL-18、IL-12p40遺伝子上のSNPと小児あるいは成人喘息、非アトピー性喘息とに相関を認めた。
結論
ダニアレルゲン、ダイオキシン、デイーゼル微粒子、ウイルス感染症、母乳、食物中に含まれるフラボノイドといった環境要因に関して、アレルギー疾患との関連について解析を行った。これらの環境要因に対する生体側分子の遺伝子の一部についてアレルギー疾患の遺伝要因となることも明らかにした。また、RNA編集という新規の塩基置換機序のアレルギー疾患との関連についても明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-