重症アトピー性皮膚炎に対する核酸医薬を用いた新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200400711A
報告書区分
総括
研究課題名
重症アトピー性皮膚炎に対する核酸医薬を用いた新規治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 公二(愛媛大学医学部皮膚科)
  • 金田安史(大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学)
  • 森下竜一(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存の治療法に抵抗性を示す難治例の少なくない重症アトピー性皮膚炎に対し、これまでにない新しい概念の治療薬である核酸医薬、特にNFkB decoy oligodeoxynucleotides (NDON) を用いた外用薬を開発し、アトピー性皮膚炎に対する新規治療法としての有用性を検討するとともに、その臨床研究を進めることを本研究班の研究目的とする。
研究方法
第2回NDON臨床試験として、アトピー性皮膚炎の重症顔面病変を対象としたNDON軟膏多施設二重盲検試験を開始した。酵素学的処理による角層除去法、針無し注射器シマジェットを利用した皮膚への遺伝子導入法、HVJ-Eとカチオニックゼラチンの相互作用による新たな遺伝子導入法開発を行った。喘息の動物モデルを利用して、吸入によるNDON治療効果を検討した。また、表皮角化細胞における自然免疫、特にTLR-3刺激とNFkB活性化との関係を検討した。
結果と考察
第2回NDON臨床試験は国内3施設の大学附属病院皮膚科で進行中である。DNA単純塗布群に比較してグリコール酸および蛋白分解酵素処置群では遺伝子導入効率が数百倍以上向上すること、シマジェットはnaked DNA injection法に比較して約100倍の遺伝子導入効率が得られること、カチオン化ゼラチン及び硫酸プロタミンとHVJ-Eとの複合体を形成することにより、HVJ-E単独の数百倍の遺伝子導入効率向上が得られることが明らかとなった。NDONは喘息モデルラットの気道抵抗を改善するとともに好酸球浸潤を抑制し、その抗アレルギー作用が確認された。また表皮細胞におけるTLR-3活性化によるIkB-aのリン酸化、さらにMIP-1aの産生誘導が確認され、表皮角化細胞でdsRNAによるTLR-3を介したNFkB経路の活性化が示唆された。本年度に開始された第2回NDON臨床試験により有効性、安全性が確認されれば、新しいアトピー性皮膚炎治療薬としての開発に道が開けると期待される。吸収効率を向上させれば、顔面以外の病変にも適応拡大が可能になると予想される。NDONの気管支喘息に対する効果が明らかとなり、またNFkBが表皮角化細胞のTLR-3を介した自然免疫にも関与していることが示されたことより、アトピー性皮膚炎に対するNDONの作用機序は、多岐にわたることが示唆される。
結論
NDONのアトピー性皮膚炎に対する有効性を確認した。今後も引き続き、アトピー性皮膚炎、その他のアレルギー・炎症性疾患の治療薬としてNDONの可能性を検討していきたい。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200400711B
報告書区分
総合
研究課題名
重症アトピー性皮膚炎に対する核酸医薬を用いた新規治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 公二(愛媛大学医学部皮膚科)
  • 金田 安史(大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学)
  • 森下 竜一(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
核酸医薬であるNFkB decoy oligodeoxynucleotides (NDON)を用いた重症アトピー性皮膚炎治療薬の開発と臨床応用を目的として研究を行った。
研究方法
アトピー性皮膚炎マウスモデル(NC/Nga)を用いたNDON効果および安全性の検討と第1回臨床試験結果の解析、NDON薬理作用の検討、重症アトピー性皮膚炎患者の顔面病変に対するNDON軟膏第2回臨床試験を多施設2重盲検のプロトコールで開始した。また、低侵襲性皮膚角層バリアー除去法の開発、針無し皮下注射器シマジェットを用いた皮膚への遺伝子導入法開発、リポソーム・カチオニックゼラチンによる高効率遺伝子導入法開発を行った。さらに、アトピー性皮膚炎と同様I型アレルギー反応が病態の中心をなす気管支喘息のモデル動物を用いたNDON効果の検討、アトピー性皮膚炎増悪機序における表皮角化細胞Toll like receptoer-3 (TLR-3)を介したNFkB活性化の関与に関する検討を行った。
結果と考察
NDON塗布によりNC/Ngaマウスの皮膚炎改善、浸潤肥満細胞のアポトーシスが観察された。タクロリムスとの比較により、同等の皮膚炎抑制効果が得られた。NDONは喘息モデルラットの気道抵抗を改善するとともに好酸球浸潤を抑制した。アトピー性皮膚炎重症顔面病変に対するNDONの多施設二重盲検試験プロトコールを作成し、第2回臨床試験を開始した。表皮角化細胞において、TNF-a、IL-1刺激によるRelAとp50のNFkB配列結合、分化誘導後のTNF-a刺激によるMIP3a産生増加、TLR-3刺激でIkB-aのリン酸化、MIP-1aの産生誘導が確認された。皮膚への核酸導入では、グリコール酸および蛋白分解酵素処置群で未処置群の数百倍、シマジェットによりnaked DNA injectionの約100倍、カチオン化ゼラチン及び硫酸プロタミンとHVJ-Eとの複合体形成でHVJ-E単独の数百倍効率向上が得られた。本研究によりNDONの顔面重症アトピー性皮膚炎治療に対する有効性とその薬理作用が明らかになりつつある。今後吸収効率を向上させることのより、顔面以外の病変にも適応拡大が可能になると予想される。
結論
本研究班は3年間の研究期間を終了する。しかし、今後も引き続き、アトピー性皮膚炎、その他のアレルギー・炎症性疾患の治療薬としてNDONの可能性を検討していきたい。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-