関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究

文献情報

文献番号
200400689A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの早期診断法の確立及び臨床経過の予測に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
江口 勝美(長崎大学(医歯薬学総合研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 三森 経世(京都大学 大学院医学研究科)
  • 住田 孝之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 岡本  尚(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 土屋 尚之(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 塩澤 俊一(神戸大学 医学部)
  • 中野 正明(新潟大学 医学部)
  • 上谷 雅孝(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 右田 清志(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 関節リウマチ (RA) の早期診断基準案と臨床経過、特に関節破壊の予知指針を作成することを目的に研究した。
研究方法
 関節痛で発症した症例を登録し、前向きに臨床経過を追跡した。後に確定診断された早期 RA と非 RA 症例の初診時所見を比較して、多変量解析で鑑別診断に寄与する因子を抽出した。また、初診時所見から臨床経過、特に関節破壊の予知因子を探索した。RA の疾患感受性遺伝子として見出した DR3遺伝子変異、Ang-1遺伝子変異、Dbl プロトオンコジーン遺伝子変異、それぞれの分子機構および病態への寄与について検討した。
結果と考察
 抗 CCP 抗体は RA に特異的な自己抗体であり、初診時に抗 CCP 抗体が陽性であれば、後に RA と診断される可能性が高いことが判明した。前向き臨床研究から、RA と非 RA 症例の初診時検査を比較し、多変量解析で鑑別診断に寄与する因子を抽出した。相対危険度から対称性手・指滑膜炎 (MRI 画像) を1点、抗 CCP 抗体あるいは IgM-RF 陽性を2点、骨浸蝕像 (MRI 画像)を2点としてスコアリングし、総スコア3点以上を早期 RA と診断すると、初診時でも感度81.5%、特異度95.2%と効率よく RA を診断できた。関節破壊を予知する因子として、MRI 画像による骨変化 (骨髄浮腫、骨浸蝕像)、抗 CCP 抗体、HLA-DRB1*0405、DR3遺伝子変異が挙げられた。Death domain を欠く DR3遺伝子変異型が生成される機構として仮想エクソンに結合するスプライシングサイレンサーを同定した。第8染色体に位置する ANG-1変異は血管新生を促進した。X 染色体上の疾患遺伝子 DBL 変異によって白血球及び滑膜細胞のアクチン重合化に不具合を生じることを明らかにした。
結論
 RA の早期診断には抗 CCP 抗体と MRI 画像所見が有用で、これを組み合わせた早期診断基準案を作成した。この早期診断基準案は感度および特異度とも優れ、今後世界的に検証され、汎用されることが期待される。RA の関節破壊の予知因子として、MRI 画像による骨変化 (骨髄浮腫、骨浸蝕像)、抗 CCP 抗体、HLA-DRB1*0405、DR3遺伝子変異が挙げられた。RA の疾患遺伝子として DR3遺伝子、Ang-1遺伝子、Dbl プロオンコジーン遺伝子の変異を見出し、これらの分子機構を解明し、RA の病態への関与を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-