新規肝がん関連遺伝子の網羅的探索とDNAチップを用いた遺伝子の相互関連性に関する研究

文献情報

文献番号
200400682A
報告書区分
総括
研究課題名
新規肝がん関連遺伝子の網羅的探索とDNAチップを用いた遺伝子の相互関連性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
油谷 浩幸(東京大学国際・産学共同研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 幕内 雅敏(東京大学医学部附属病院肝胆膵外科)
  • 深山 正史(東京大学医学部病理学)
  • 井原 茂男(東京大学先端科学技術研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
27,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的 発癌は様々な遺伝子変異の蓄積によって起こり、癌抑制遺伝子の変異と関連する染色体領域のヘテロ接合性の欠失(LOH)や癌遺伝子を含む領域の増幅は癌の発生、進展に寄与すると考えられ、肝細胞癌に特異的な染色体変異を明らかにする。すでに同定した肝癌特異的な発現を示す遺伝子の機能解析を行い、肝発がんにおける役割を検討し、治療、診断の標的分子としての有効性を評価する。
研究方法
研究方法 複数のマイクロアレイプラットフォームを用いることにより、最大5万個の転写産物について肝細胞癌組織の非癌部と癌部組織においての遺伝子発現プロファイリング解析をおこない、正常臓器での発現データベースと比較して新規バイオマーカーとなる分子を探索した。最大10万SNPについてのタイピングアレイにより得られる多型情報を利用することにより、アレル別に染色体コピー数を解析するGenome Imbalance Map法を新たに開発し、肝細胞癌に生じた染色体変異を解析した。コピー数の評価は定量的PCRおよびFISH法により行った。
結果と考察
結果と考察 新規の診断、治療の標的分子として、GPC3を含めた膜分子3、転写因子2、フォスファターゼ1、細胞質因子2,分泌分子2を同定した。GPC3には先に同定したR358とは異なる部位で切断を受けた分子種の存在も確認された。GPC3は既に報告した肝前癌病変のみならず、予後の悪いhepatoid胃癌を鋭敏に認識する有用な免疫組織染色のマーカーとしても有効であることが示された。遺伝子発現プロファイルには染色体変異に起因すると考えられるゲノム領域によるバイアスが存在することが明らかとなった。GIM法はホモ欠失領域、染色体増幅の検出のみならず、Uniparental disomy (UPD)を含めたアレル別染色体変異を同定可能であることがFISH法により確認され、新たな肝癌関連遺伝子の探索法として期待される。
結論
結論 網羅的なRNAおよびゲノム解析により、肝細胞癌の診断、治療のための標的分子が同定された。sGPC3は血清腫瘍マーカー、免疫組織染色マーカー、抗体医薬の標的としても有望と考えられる。アレル別の染色体解析法は劣性変異の検出に有力な手法になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400682B
報告書区分
総合
研究課題名
新規肝がん関連遺伝子の網羅的探索とDNAチップを用いた遺伝子の相互関連性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
油谷 浩幸(東京大学国際・産学共同研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 幕内 雅敏(東京大学医学部附属病院肝胆膵外科)
  • 深山 正史(東京大学医学部病理学)
  • 井原 茂男(東京大学先端科学技術研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的 肝細胞の癌化機構の包括的な解明のためには、発現プロファイル解析に加えて発癌関連遺伝子の変異、ヘテロ接合性の消失や染色体異常、エピジェネティクス、蛋白発現など生体内試料から得られる種々の情報を統合した解析が必要であり、臨床情報、文献情報などの既存の情報を他の生命情報と統合して総合的に解析するシステムの開発が求められる。
研究方法
研究方法 最大5万個の転写産物について肝細胞癌組織の非癌部と癌部組織においての遺伝子発現プロファイリング解析をおこない、肝がん関連遺伝子の網羅的探索を行った。肝細胞癌に生じている染色体欠失や増幅などのゲノム異常を解明すべく、Expression Imbalance Map法により発現プロファイルの染色体領域による偏在の有無を検討した。さらに多型情報を利用することによりアレル別にコピー数を解析するGenome Imbalance Map法を新たに開発し、肝細胞癌に生じた染色体変異を解析した。
結果と考察
結果と考察 新規の診断、治療の標的分子として、GPC3を含めた膜分子3、転写因子2、フォスファターゼ1、細胞質因子2,分泌分子2を同定した。なかでも肝細胞癌に高発現するヘパラン硫酸プロテオグリカンGPC3はGPIアンカーされる分子であり、FGF2、BMP、Wntなどのモルフォーゲンシグナルを調節する。その全長分子以外にN末端側切断断片sGPC3(40kDa)が血清中に存在することが認められ、ELISAによる血清濃度測定系を樹立した。さらにC末端側の異なる部位で切断を受けた分子種の存在も確認された。sGPC3血清測定系の樹立を行い、新規肝癌腫瘍マーカーsGPC3の有用性を再確認できた。GPC3は肝前癌病変のみならず、予後の悪いhepatoid胃癌を鋭敏に認識する有用な免疫組織染色のマーカーとしても有効であることが示された。一方、遺伝子発現プロファイルには染色体変異に起因すると考えられるゲノム領域によるバイアスが存在することが明らかとなった。GIM法はアレル別Uniparental disomy (UPD)を含めた染色体変異を同定可能なことから、新たな肝癌関連遺伝子の探索が期待される。
結論
結論 網羅的なRNAおよびゲノム解析により、肝細胞癌の診断、治療のための標的分子が同定された。sGPC3は血清腫瘍マーカー、抗体医薬の標的としてもとしても有望と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-