アジア・太平洋地域におけるHIV感染症の疫学に関する研究

文献情報

文献番号
200400658A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア・太平洋地域におけるHIV感染症の疫学に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武部 豊(国立感染症研究所エイズ研究センター1室)
研究分担者(所属機関)
  • 有吉紅也(国立感染症研究所エイズ研究センター第2グループ)
  • 草川 茂(国立感染症研究所エイズ研究センター1室)
  • 椎野禎一郎(国立感染症研究所エイズ研究センター1室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアにおける流行形成のメカニズムに関する分子疫学的研究と、北タイ・コホート研究、アジア型HIV-1株に関する研究資源の整備・開発を主要な柱として、アジア・大平洋地域におけるHIV-1感染症の疫学研究を推進した。
研究方法
?@アジア・大平洋地域に分布するウイルス株の遺伝子構造、系統関係・組換え構造の解析に基づき、アジアにおける流行形成のメカニズムを考察した。
?A北タイ・ランパンにおけるコホート研究による患者検体・患者情報・生存追跡データを活用し,宿主遺伝子多型とエイズ発症との関連性に関する解析を進めた。
?BlongPCR法によって、中国型HIV-1ヴァリアントの感染性の分子クローンを樹立し、そのウイルス学的性状を検討した。
結果と考察
?@疫学的に関連性のないミャンマーの3個体からCRF01_AEとCRF07_BCの間の新型組換えウイルス(ICR0701) を発見した。この知見は中国・ミャンマー両地域の流行が密接不可分の関係があることを示す新たな証拠と考えられる。また、これは我国研究機関が発信する最初のCRFとなる可能性が期待される。
?A我が国における感染者・患者報告数が昨年度はじめて1000名の大台を越えるなど、感染者の増加傾向がさらに加速している。このような動向を反映して、国内症例でははじめて異なる系統のHIV-1株間の共感染例や新型組み換えウイルスを見出した。これらの知見は、我国におけるHIV感染症が公衆衛生上予断を許さないフェーズに入りつつある事を暗示するものと考えられる
?Bジェネリック抗HIV薬“GPOvir”の死亡率低減効果を実証した。また女性群において,宿主遺伝子多型(IL4-589T、RANTES-28G)と発症遅延との関連性がより鮮明に現れることを見出した。
?C研究資源整備の一環として、本年度あらたに中国に分布するCRF07_BCの感染性分子クローン樹立に成功した。
結論
アジア・大平洋地域におけるHIV流行の分子疫学研究、エイズ発症に影響を及ぼす宿主遺伝子研究、また流行の動因となっているアジア型 HIV-1ヴァリアントに関する研究資源の整備・開発に関する研究が推進された。これらの成果は、我が国を含むアジア・大平洋地域におけるHIV感染症の将来動向の把握に加え、アジアの流行の成立ち、流行拡大の背景にある宿主側・ウイルス側の要因の解明に重要な意義があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-