血友病の治療とその合併症の克服に関する研究

文献情報

文献番号
200400649A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病の治療とその合併症の克服に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 洋一(自治医科大学分子病態研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 敬也(自治医科大学遺伝子治療研究部)
  • 吉岡 章(奈良県立医科大学小児科学教室)
  • 小林 英司(自治医科大学臓器置換研究部)
  • 長谷川 護(ディナベック株式会社)
  • 天野 景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)血友病に治癒を導く血友病遺伝子治療の基礎確立と臨床応用:本年度は安全性向上を第一に、実用化に向けたベクターと標的臓器の選択、細胞治療併用を目指した研究を展開する。
2)血友病インヒビタ対策として免疫寛容誘導を検討する。
研究方法
・アデノ随伴ウイルスベクタ-(AAVV)とサル免疫不全ウイルスベクター(SIVV)の安全性と発現効率を検討した。筋肉、脂肪細胞と血管内皮細胞、肝細胞を標的とした。ベクター(AAVV血清型I-VIII、SIVV)とプロモータ(PM)(CAG,CMV,PAI-1, α1 anti-trypsin(α1AT),β-actinのPM)の違いによる臓器特異的発現を比較した。AAVV(搭載可能サイズ5kb)の血友病A(最小遺伝子:4.5kb)への応用を検討した。細胞治療併用はマウス肝細胞異所性移植(腎皮膜化、皮下)で検討した。サルでは、ヒト型とサル型FIX遺伝子を用いた。サル型ではタグ遺伝子付加などで因子同定を試みた。
・超高解像度エコー下に胸腺細胞へのFVIII直接提示による免疫寛容誘導を検討した。
いずれの研究も国及び大学の倫理指針を準拠した。
結果と考察
大型動物利用と安全性に意義があるSIVV生産と一部改変の契約が成立した。AAV8Vの高い肝特異性とAAV1Vの細胞特異性が確認された。PMにより特異性は高まり、発現臓器限局による安全性向上が示唆された。新生マウス筋肉と成熟マウス血管内皮に、1年以上、治療量FIXの発現が観察され、血友病B治療の基本技術は確立できた。AAVVを利用して筋肉、肝臓に十分量因子の長期発現が確認され、血友病A治療への道が開かれた。肝機能と肝細胞に異常は見られなかった。血友病Aマウス片側腎皮膜下肝細胞移植で5%の、両側モデルでは10%のFVIII活性を示した。皮下移植肝細胞も生着した。安全性の高さから、今後の展開が期待できる。サルに治療レベルヒト型血中FIX発現と数ヶ月間の安全性が確認され遺伝子治療の基本技術は確立した。さらに、長期安全性を検討中である。成熟マウスに免疫寛容誘導方法が確立できた。
結論
今年度の目標はほぼ達成できた。AAVVを血友病Aにも利用可能になり、臨床応用へ一歩近づいた。細胞-遺伝子治療併用も独創性が高い。実用化にはベクターパテント、社会問題など、乗り越えなければならない壁はまだ高い。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-