薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究

文献情報

文献番号
200401384A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 宜親(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所)
  • 小崎 繁昭((社)日本臨床衛生衛生検査技師会)
  • 畝 博(福岡大学医学部)
  • 武澤 純(名古屋大学大学院医学研究科)
  • 宮崎 久義(国立病院機構熊本医療センター)
  • 山口 惠三(東邦大学医学部)
  • 吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
  • 小西 敏郎(NTT東日本関東病院)
  • 北島 博之(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 藤本 修平(群馬大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
21,675,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの薬剤耐性菌やセラチア、エンテロバクター、緑膿菌などの様々な細菌が国内の医療施設において院内感染症や血流感染症、術後感染症等の二次的な感染症(いわゆる院内感染症、病院感染症)として重大な関心事の一つとなっている。
そこで、国内の医療施設で分離される臨床分離菌における薬剤耐性の獲得状況やそれらによる感染症の発生状況、さらに経時的な発生動向の推移を把握し、それらの低減化に寄与するネットワークの構築が求められている。
そこで、NNISなど海外の経験を参考にしつつ我が国の現状や実情に合致した「院内感染対策サーベイランス」システムの構築が平成12年度より厚生労働省により「院内感染対策サーベイランス事業」(以下、「事業」とする)として開始された。本研究班では、研究班参加施設の協力により「事業」の運用を専門的な視点から支援する事を目的の一つとして研究が実施された。
研究方法
「検査部門」、「集中治療部門(ICU)」、「全入院患者部門」、「手術部位感染症(SSI)部門」、「新生児集中治療部門(NICU)」の5つのサーベイランス部門について研究班参加施設の協力により、それぞれの部門におけるサーベイランスの実施や運営方法と運用状況、データの集積、点検、解析、還元、細菌検査の精度管理、データベースの標準化など様々な検討やチェックが行なわれた。
結果と考察
経年的なICU部門や全入院部門の解析結果から、MRSAが院内感染症の主たる起因菌であり、また人工呼吸器関連肺炎の発生率が増加している事が示唆された。また、手術部位感染症の発生が増加する兆候が見られた。さらに、低出生体重児特に1,000g未満の児における感染症が問題となっている事が確認された。一方、細菌検査室の調査では、多剤耐性緑膿菌の分離率が非常に高くなっている施設が、一部ではあるが存在する事が確認された。以上の事実から、今後も、薬剤耐性菌による施設内感染症、病院感染症の低下を実現する事を目的とした、個々の医療施設における一層の努力とともに、実効ある行政施策の強化が必要となっている。
結論
ICUにおける病院感染症や術後の手術部位感染症、低出生体重児における感染症の発生頻度は、年を経る毎に徐々に増加しつつある傾向が確認された。また、多剤耐性緑膿菌の分離頻度も上昇傾向にあり、今後も引き続き十分な監視を行うとともに、それらを低減化させる政策が急務となっている。

公開日・更新日

公開日
2005-04-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
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