クリプトスポリジウム等による水系感染症に係わる健康リスク評価及び管理に関する研究(クリプトスポリジウム症等感染リスクの評価手法の確立に関する研究)

文献情報

文献番号
200400619A
報告書区分
総括
研究課題名
クリプトスポリジウム等による水系感染症に係わる健康リスク評価及び管理に関する研究(クリプトスポリジウム症等感染リスクの評価手法の確立に関する研究)
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 井関 基弘(金沢大学 医学部)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 大村 達夫(東北大学大学院 工学研究科)
  • 片山 浩之(東京大学大学院 工学研究科)
  • 金子 光美(立命館大学 理工学部)
  • 黒木 俊郎(神奈川県立衛生研究所 微生物部)
  • 平田 強(麻布大学 環境保健学部)
  • 眞柄 泰基(北海道大学 創成科学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 水道水のクリプトスポリジウム(以下クリプト)等による汚染の感染リスク評価に関して、汚染源からヒトの感染に至るまでの全ルートを、本研究で設定したフィールドを対象として総合的な観点から実証的に検討する。
研究方法
 2004年夏に長野県内のスポーツ施設で発生したクリプト集団感染事例の現地調査を実施した。また、ヒトから分離したジアルジアの遺伝子解析を行った。一方、水道水源周辺環境等に生息する動物、及び、海外から輸入された哺乳類のクリプトの保有状況につき調査した。また、金沢市内ペットショップで市販されているオカメインコから分離した両原虫の種の同定と遺伝子解析を行った。
 東京都内下水処理場の下水及び相模川のクリプトの遺伝子解析を行った。また、利根川並びにその支流である小山川のクリプト、指標微生物、各種指標水質項目を数時間間隔で測定し、時間周期で発生する濃度変動を評価した。さらに、阿武隈川流域を対象流域として設定し、土地利用にもとづいた流出解析モデルの構築を行い、河川水中のクリプト濃度を予測した。
結果と考察
 長野県の集団感染は、施設利用者間での感染であった可能性が示唆された。発症者から分離した株はC. hominis であった。また、ヒトから分離したジアルジアは、2株がヒトにのみ感染するとされる Assemblage A-II であり、1株が人獣共通感染性の Assemblage B であった。一方、水道水源周辺に生息する動物の中では、鳥類のみ5検体からクリプトが検出された。輸入ペットでは、げっ歯類が高率に両原虫を保有していた。また国内ペットショップのオカメインコから分離された両原虫は、ヒトに感染性を有していた。
 下水から検出されたクリプトで最も多いのはC. parvum genotype 1であり、河川水では、すべてC. parvum Pig genotype 1であった。また、利根川並びにその支流である小山川のクリプト濃度は、試料採取の時間間隔である3時間の間に、最大で10倍程度のばらつきを持つことがわかった。さらに、本研究で構築したモデルを用いて阿武隈川のクリプト濃度を予測すると、その濃度は平均で0.01個/Lと算出された。
結論
 下水、ペットショップで市販されている動物から分離したクリプトは、遺伝子解析でヒトに感染性があることが判明した。汚染源として、ヒトや身近な動物が極めて重要であることがわかった。また、河川水中のクリプト濃度は降雨に伴う濁度上昇とともに増加する傾向が見られた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-