動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200400611A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 正男(酪農学園大学(環境システム学部))
研究分担者(所属機関)
  • 奥 祐三郎(北海道大学 大学院獣医学研究科)
  • 川中 正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 高倉 彰((財)実験動物中央研究所)
  • 嘉田 良平(UFJ総合研究所 研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界的に被害が増大しているエキノコックス症の流行地拡大を阻止する方策を提案する。国内における主な流行地である北海道の感染源リスク低減のみならず、本州への侵入防止を視野にいれた全国的な監視システムを構築する。具体的には、ペットの調査、簡易診断法の開発(動物ならびに人)、伝播の数理モデル作成、感染源除去対策・リスク管理の確立に関する研究。
研究方法
北海道から本州への移動犬を含むペットの多包条虫調査を実施し、さらに、ペット迅速診断のキット開発を行った。山間部での感染源対策のためにベイト(駆虫薬入り餌)散布、PCRによる糞便の排泄動物種確認法、エキノコックスの伝播モデル化を行った。また、アンケート調査を実施しリスク管理に要する費用試算と便益移転の検証をした。
結果と考察
エキノコックス:北海道から4例の感染犬を発見し「健康危険情報」を提供した(うち、2例は感染症法改正後の「犬の届出」)。「犬のエキノコックス症対策ガイドライン2004」を作成した。迅速抗原検出法(イムノクロマト法)のキット化を検討した。北海道から本州へ移動したペット検査の他、東北・関東地方および大阪府で犬の調査をしたが、全例陰性であった。また、東北地方の豚からもエキノコックスは検出されなかった。キツネに対して 山間部でのベイト散布を試み、感染率の低下を認めた。
 その他:国内の野生アライグマからはアライグマ回虫感染個体は検出されなかった。北海道で流行する旋毛虫(トリヒナ)については、2種分布することを明らかにした。
 本研究班の成果に基づき、エキノコックスについて法改正「犬の届出」が施行され、リスク管理が適切に実施されることとなった。しかし、これは人のエキノコックス症予防の観点からは、その緒についたばかりである。野生動物:キツネ他への対応が不可欠である。北海道におけるキツネ集団駆虫によるリスク低減・根絶のための一層の研究開発が望まれる。
結論
犬のエキノコックス症対策のために開発された関連技術はリスク除去に有効であることを示した。しかし、いまだペットの飼い主や獣医師の問題意識は低く、移動するペットの監視システム体制も含めて今後、検討する必要がある。山間部でキツネ対策の有効性が示されたが、自治体が実施可能で効率的な感染源対策へ向けた研究開発と、ガイドライン作成およびサポート体制確立が期待される。北海道におけるエキノコックス感染リスクの低減が本州への流行拡大を防止するもっと有効な対策であることから、とくに、野生動物:キツネ対策技術の効率化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-27
更新日
-