知的障害のある人への適正な医療の提供に関する研究

文献情報

文献番号
200400559A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害のある人への適正な医療の提供に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 耕策(鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設脳神経小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 松石 豊次郎(久留米大学医学部小児科)
  • 平山 義人(東京都立東大和療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害者の健康問題については一般の関心事ではない。しかし、知的障害者は一般集団に比較して若年での死亡率が高いことが明らかになっている。知的障害者の健康の問題、医療のニーズ、さらに知的障害の原因となった症候群についての健康問題を明らかにし、知的障害者の健康管理上注意するべき点を明らかにし、知的障害者への適正な医療の提供を行うことを目的とする。
研究方法
知的障害者の健康問題について鳥取県、久留米市の知的障害を対象とした健康問題についての調査を行った。東京都東大和療育センター受診者を対象に専門医療ニーズとした調査を行い、知的障害の原因となった症候群別の健康問題について検討を行った。全国重症心身障害児を守る会 保健医療・福祉施設あしかがの森に在籍する知的障害者の骨密度などについて検討した。
結果と考察
1.知的障害者ではてんかん、肥満に伴う成人病の頻度が高く、抗けいれん剤や降圧剤による歯肉増殖に注意する必要がある。肥満治療は連携が必要である。
2.ダウン症候群は近年出生率が増加し、心臓病治療で若年での死亡率が減少し、心臓病がない場合50歳-60歳まで生存が可能である。30歳台での歯の数の減少、30歳以降での視聴覚器の障害、てんかんを初発とするアルツハイマー病の発症がQOLに与える大きな要因であることを明らかにした。
3.プラダー・ウイリー症候群は異常な食欲による糖尿病治療の困難さだけでなく、問題行動や精神症状の頻度が高く社会的な適応が不良であることを明らかにした。
4.結節性硬化症では思春期以降の腎腫瘍が生命予後に重要で、腎腫瘍の検出と経過観察マニュアルを作成した。
結論
1.知的障害者の医療機関受診に当たって、問題行動のために不快な対応を受けることが多く、この問題が医療機関受診を遅らせる1つの要因であることが明らかになった。自閉症患者への対応の仕方などを医療関係者に教育する必要がある。
2.知的障害者の健康全般では、肥満と肥満と関係する成人病の頻度が高く、また中年での骨粗しょう症の頻度が高いことが明らかになり、成人での栄養管理と運動指導が重要な課題であることが明らかになった。
3.知的障害者が中年になって急にADLを低下させる原因として、感覚器障害、精神症状、てんかんの合併と早発痴呆の出現などが考えられ、これらへの注意が必要である。
4.以上の点を踏まえ、知的障害全般および原因となった症候群別の健康管理マニュアルを作成する。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400559B
報告書区分
総合
研究課題名
知的障害のある人への適正な医療の提供に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 耕策(鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設脳神経小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 松石 豊次郎(久留米大学医学部小児科)
  • 平山 義人(東京都立東大和療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害のある人は突然死、若年での死亡率が高いことが明らかになっている。訴えが出来にくいことによる症状の悪化が1つの要因であることが推察されるが、その実態は明らかではない。知的障害のある人の健康問題、医療のニーズ、知的障害の原因となった症候群の生涯にわたる健康問題を明らかにして、知的障害者が健康的な生活を営むために必要な医療のあり方を明らかにする。
研究方法
知的障害者の健康問題を地域の養護学校高等部卒業生、地域の知的障害者施設・作業所に在籍する知的障害者について、知的障害者の死亡、疾病、必要な専門医療、特定の疾患の健康問題、医療ニードについて、アンケート、カルテ調査により検討した。
結果と考察
1.知的障害者の死亡例について、結節性硬化症の腎腫瘍、プラダー・ウイリー症候群の肥満・糖尿病、悪性腫瘍発見の遅れを注目した。
2.知的障害者全般ではてんかん、肥満と関係する成人病、骨粗しょう症の頻度が高く、医療ニードとして皮膚科、歯科の専門医療ニードが高いことを明らかにした。
3.ダウン症候群は新生児期の積極的心手術により50-60歳まで寿命が伸び、さらに出産年齢の高齢化による出生率の増加で有病率が増加している。30歳以降歯牙の数が減少し、白内障・難聴などの感覚器の問題、てんかんを初発とするアルツハイマー病の発症がQOLに与える大きな因子であることを明らかにした。
4.プラダー・ウイリー症候群は異常な食欲による肥満・糖尿病だけでなく、問題行動や精神症状に頻度が高く、成人では社会的不適応の頻度が高く、また糖尿病の管理が出来にくいことを明らかにした。
5.結節性硬化症では思春期以降の腎腫瘍の増加が生命予後に重要で、腎腫瘍の定期検査のマニュアルを作成した。
6.知的障害者が医療機関受診に当たって、問題行動のために不快な対応を受けることが多く、この問題が医療機関受診へアクセスへの抵抗となっていることも多い事が明らかになり、医療従事者への教育が重要であることが明らかになった。
結論
1.知的障害者全般について、肥満、成人病、骨粗しょう症の頻度が高いことを理解し、食生活、運動、骨折の予防などへの配慮が必要である。またてんかんの合併が約20%で、抗てんかん薬の副作用、てんかんの悪化によるADLの低下に注意が必要である。また、知的障害の原因となった症候群によって成人後の特有の疾病があり、知的障害者の健康管理マニュアルを作成する。
2.適正な医療の提供のためには疾病構造の理解だけでなく、介護する人が些細な変化に気づくための教育、医療従事者が知的障害者への偏見をなくすための教育が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-16
更新日
-