文献情報
文献番号
200401389A
報告書区分
総括
研究課題名
超急性期軽度低体温療法による重症脳障害患者の予後改善戦略と医療費評価-多施設無作為対照臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
前川 剛志(山口大学(医学部附属病院))
研究分担者(所属機関)
- 林 成之(日本大学医学部)
- 荻野 景規(金沢大学大学院医学系研究科)
- 武澤 純(名古屋大学医学部附属病院)
- 長尾 省吾(香川大学医学部附属病院)
- 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【心筋梗塞・脳卒中臨床研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
50,534,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急性重症頭部外傷患者の受傷後超急性期に軽度低体温(32-34℃)療法を行えば、患者の予後が著明に改善される可能性が高い。これを多施設無作為対照臨床研究(RCT)で実施し新しい医療技術を開発して国民の保健に資するとともに、その成果を世界に向けて発信することを目的とする。
研究方法
重症頭部外傷患者を対象に40施設が参加して本RCTを実施した。大学病院医療情報ネットワークを利用し、対照軽微低体温群と軽度低体温群に振り分けてデータ入力をした、研究の質を保証するために脳温、心拍出量など8項目につき、1分毎のデータをコンピュータ処理した。予後評価は3および6ヶ月後にグラスゴー・アウトカム・スケール(GOS)で、医療費評価は3施設で行った。ワーキンググループで神経毒性アミノ酸、ラジカル関連物質、サイトカイン、およびmatrix metalloproteinase(MMP)を測定した。また脳障害のメカニズムや植物症の評価法を検討した。
結果と考察
平成17年3月末日までに109症例が登録された.平成16年10月15日までの95症例につき,3ヶ月後の予後をprimary end pointとしてデータ解析委員会で中間解析し,独立モニタリング委員会にその結果を報告した.本研究における解析対象例数は、対照軽微低体温群で30例、軽度低体温群で63例であった。その結果、本RCTでは現時点で対照軽微低体温群と軽度低体温群間にGOS(3ヶ月後)に有意差は認められず、死亡率を含めた各種合併症の発生率も有意差を認めないとの報告を受けている。また神経細胞死と関連する興奮毒性アミノ酸、ラジカル関連物質、各種サイトカインは両群間の比較はしていないが、予後良好例と不良例で有意差が出ることが示唆された。また、MMPは血液脳関門を破綻するが、低体温によりこれは低下傾向を示した。脳障害直後に視床下部-下垂体-副腎系の神経防御過剰反応が発生することが分かり、植物症患者の重症度分類を完成した。両群間でICU入室期間は変わらず、直接経費、包括医療費ともに両群間で差がなかった。そこで、医療費評価から軽度低体温療法は選択しやすい治療法になると思われる。
結論
平成17年3月末日までに109症例が登録され、中間解析では両群間に有効性と合併症ともに有意差が認められていない。目標の300症例に到達すべく、今後も研究を継続していきたい。
公開日・更新日
公開日
2005-06-01
更新日
-