早期膵臓がん検出マーカーの同定

文献情報

文献番号
200400450A
報告書区分
総括
研究課題名
早期膵臓がん検出マーカーの同定
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山下 義博(自治医科大学・医学部・ゲノム機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 間野 博行(自治医科大学医学部ゲノム機能研究部)
  • 管野 健太郎(自治医科大学医学部消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膵臓がんは極めて予後不良な悪性腫瘍であり、特徴的臨床所見に乏しく、診断が確定した時点では既にがんが進行し根治手術が困難な例がほとんどを占める。しかも診断目的で施行する膵液細胞診による膵臓がんの診断率も依然高くなく新たな診断マーカーの同定が世界的な急務といえる。本研究計画において我々は、膵管上皮細胞を用いたDNAチップ解析を大規模に行うことにより、膵がん細胞特異的発現を示す遺伝子の同定を行う。
研究方法
(1)検体の純化。上皮細胞特異的表面蛋白MUC1に対する抗体を用いたマグネティックビーズカラムによるMUC1陽性細胞の簡便な純化装置を開発した。また本邦に広く分布する研究協力施設において、周辺病院より採取した膵液から膵管上皮細胞を効率よく純化保存する事業を開始した。(2)DNAチップ解析。健常人25例および膵臓がん24例より純化した膵管上皮サンプルよりmRNA分画を調整し、アフィメトリクス社の全ヒト遺伝子DNAチップ(HGU133)にハイブリダイズさせた。(3)ラットからPSCを分離精製し初代培養系を作成した。この培養系を用いて、Activin A, TGF-beta、Angiotensin II(AT―II)の効果を中心に検討した。
結果と考察
(1)健常者25例および膵臓がん患者24例より純化した膵管上皮細胞を用いてDNAチップによる網羅的遺伝子発現解析を行った。膵臓がん特異的な発現を示す遺伝子を同定する目的で、両群間で発現量が有意に異なる遺伝子をスクリーニングしたところ、21プローブセット(20遺伝子に相当)が同定された。これら遺伝子発現データを用いて、遺伝子発現量による膵臓がん診断アルゴリズムの開発を試みた。(2)PSCはTGF-betaを自ら産生、放出しそのオートクリン機構により自らの増殖を抑制している。しかし、AT-IIはTGF-beta刺激伝達機構の細胞内抑制蛋白であるSmad 7の発現を増強することにより、オートクリンTGF-betaのPSC増殖抑制機構を阻害し、その結果PSCの増殖を促進することを見いだした。
結論
本研究事業において膵臓がんの早期診断マーカー同定を目指した研究が順調に進行している。膵液より純化した膵管上皮細胞のバンク事業として計266例を超えており、我々のPancreas Bankは世界最大の膵管上皮バンクとなっている。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-