新規がん予防・早期発見システムを用いた包括的ながん予防の開発研究

文献情報

文献番号
200400443A
報告書区分
総括
研究課題名
新規がん予防・早期発見システムを用いた包括的ながん予防の開発研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田原 榮一((財)放射線影響研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 安井 弥(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 分子病理学研究室)
  • 児玉 和紀((財)放射線影響研究所 疫学部)
  • 笠置 文善((財)放射線影響研究所 疫学部)
  • 西 信雄((財)放射線影響研究所 疫学部)
  • 鈴木 元((財)放射線影響研究所 )
  • 藤原 佐枝子((財)放射線影響研究所 臨床研究部)
  • 林 奉権((財)放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)
  • 谷山 清己(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本プロジェクトは、三つの大きな柱からなり、ユニークながん予防モデルと見倣される放影研の長期追跡集団を用いて消化器がんの早期発見・予防システムを確立する。
研究方法
1)新規がん特異的発現遺伝子の同定:胃がんについてSAGE法で網羅的遺伝子発現解析を行い、正常臓器・組織の遺伝子発現プロファイルと比較し、特異的発現態度を示す遺伝子を抽出。2)がん一次予防のコホート研究では、放影研寿命調査集団(LSS)による郵便調査から得られた情報により果物や野菜摂取によるがん抑制効果あるいは喫煙の促進効果の時間的推移について検討。二次予防では、血清試料が利用できる放影研成人健康調査コホート(AHS)の胃がんコホート内症例対照研究と、三次予防では、LSS/郵便調査回答者についてのがんの予後規定因子を検討。3)免疫学的発がん高危険群の同定に関する研究:広島・長崎のAHS集団の胃がん発症群と対照群についてIL-10遺伝子の多型部位のハプロタイプ解析。
結果と考察
1)胃がんSAGEライブラリーとNCBIデータベース中の主要な正常臓器のライブラリーを比較し、約200の候補遺伝子をリストアップし、正常臓器と胃がんにおける遺伝子発現を検討。少なくとも8種類のがん特異的発現遺伝子を同定。2)果物や野菜の摂取は、がんリスクに対する即効性の抑制要因でなく、長期的時間経過を経た上での抑制要因であり、喫煙はがんリスクへの促進効果である。胃がん組織型と放射線被曝との相関を検討した結果、びまん型に有意に高い。LSSの1978年の郵便調査以後にがん(肺、胃、大腸、乳房)に罹患した者について、予後因子を解析した結果、診断時の年齢、臨床進行度が有意に予後と関連。3)IL-10GGCG/IL-10GGCGはIL-10ATTA/IL-10ATTAの対象者に比べ、血中IL-10レベルが高く、胃がん発症リスクが有意に高かった。
結論
1)がん特異的発現遺伝子の内、MIAおよびRegIVは新しい診断・治療のマーカーである。2)食道がん並びに胃がんの一次予防には、禁煙を心がけ、果物や野菜の日常的な摂取を恒常的に努めることがその戦略である。胃がんに対する放射線リスクは、びまんがんに有意に高い。3)IL10-GGCG/ IL10-GGCGを持つ集団は、血漿中IL-10レベルも他のハプロタイプに比べて高く、胃がん発症リスクも高いことから、胃がん高危険群である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-