難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200400440A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
秦 順一(国立成育医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所 )
  • 大喜多 肇(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部)
  • 宮下 俊之(国立成育医療センター研究所 成育遺伝研究部)
  • 副島 英伸(佐賀大学医学部 分子生命科学講座)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学 病理学)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター 生化学研究部)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター 小児腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、遺伝子構造異常、遺伝子修飾様式および各種の分子発現様式の詳細な解析を通じて各種難治性小児がんの臨床的特性を明らかにし、分子情報に基づいた新規診断・治療法を開発する。また、形態学的所見および分子情報に基づいた中央診断システムを確立しつつ、希少疾患である小児がんの検体保存システムの構築を通じて基礎研究、臨床研究を推進することを目的とする。
研究方法
1)小児がんにおける遺伝子構造異常の詳細解析と遺伝子標的治療モデルの開発、2)エピジェネティックな遺伝子修飾や臓器形成遺伝子機能の解析、3)再発小児がんの生物学的特異性の解明と早期予知法の開発、4)中央診断システムと検体保存システムの構築による診断法の標準化と臨床研究・基礎研究の推進、
結果と考察
1)Ewing肉腫の90%以上にEWS遺伝子の再構成に伴うキメラmRNAの発現を認めることが判明した。そこで、Ewing肉腫細胞株によるキメラmRNAを標的とした分子治療法の開発を目指しsiRNAベクターの構築を開始した。また、粘液型脂肪肉腫で見られるTLS-CHOPキメラ遺伝子を標的としたsiRNAによる細胞株増殖抑制に成功した。2)Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)では染色体11p15.5に存在するインプリンティングドメインでのDNAメチル化状態を明らかにした。DMR-LIT1と呼ばれる領域では母由来遺伝子が脱メチル化を受けており、そのことがLIT1遺伝子の機能発現に結びつき、結果的にKIP2等の機能抑制に作用することが判明した。BWSの病型と遺伝子型(KIP2/LIT1およびIGF2/H19サブドメインのメチル化状態)が相関することが明らかになった。3)小児白血病10例についてGenechip解析を終了した。また、フローサイトメトリーによるMRD検出の評価を行うための基礎実験を開始した。4) 横紋筋肉腫および各種の小児血液腫瘍に対する多施設臨床試験における中央病理診断施設ならびに検体保存施設としての活動を開始した。
結論
本年度の研究で難治性小児がんの臨床特性の分子情報に関して重要な成果が得られた。また、その理論を応用して治療法の開発に関しても研究が進みつつある。このように個々の研究成果は新規性、科学性が高いと考えているが、今後より一層の研究の進展を目指す。

公開日・更新日

公開日
2005-05-18
更新日
-