文献情報
文献番号
200400428A
報告書区分
総括
研究課題名
小児科診療における効果的薬剤使用のための遺伝子多型スクリーニングシステムの構築に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶応義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 奥山虎之(国立成育医療センター 遺伝診療科)
- 高橋孝雄(慶應義塾大学 医学部)
- 山岸敬幸(慶應義塾大学 医学部)
- 百々秀心(国立成育医療センター 循環器科)
- 菅谷明則(東京都立清瀬小児病院循環器科)
- 熊谷昌明(国立成育医療センター血液腫瘍科)
- 緒方勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
- 長谷川奉延(慶應義塾大学 医学部)
- 谷川原祐介(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
23,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年の薬理ゲノム学の進歩により、薬物代謝酵素の遺伝子多型のうち、低代謝能アレルを有する患者が副作用を発症するリスクが高いことが明らかにされてきた。小児においては副作用がおきた場合に重篤化する可能性が高い為、薬剤投与前に遺伝子多型スクリーニングをおこない、薬効や副作用のリスクを予測する臨床的意義は大きい。本研究では、主任研究者自身が開発した熱変性高速液体クロマトグラフィー法による多種遺伝子同時解析システム(特願平11-357701)を用い、薬効・副作用の発症と主要な薬物代謝酵素の遺伝子多型の関連について包括的に評価した。
研究方法
抗凝固薬ワーファリン・抗てんかん薬クロバザム・白血病薬メソトレキセート・6メルカプトプリン等の薬剤について各薬物の代謝酵素の遺伝子多型を同定し、患者群を対象として熱変性高速液体クロマトグラフィー法によるジェノタイピングを行った。各遺伝子多型と、臨床情報(年齢・体重・用量・血中濃度、薬効、副作用の発症等)との関連を多変量解析により評価した。また、これらの遺伝子多型の検査を診療の一環として運用する際の技術的・倫理問題について検討した。
結果と考察
① ワーファリンの維持投与量は、VKORC1座位の1173C>T多型のCTヘテロ接合体患者群でTTホモ接合体群より大きいことを示した(p=0.003)。
② クロバザムの活性中間代謝産物であるN-デスメチルクロバザム血中濃度/クロバザム投与量比および血中N-デスメチルクロバザム血中濃度/血中濃度比に大きな個人差が存在し、その個人差はCYP2C19の遺伝多型により説明できることを示した(p<0.0001)。
③ 関東地区の4カ所の主要な白血病治療施設において、新規発症の急性リンパ芽球性白血病症例を対象とした6-メルカプトプリンの治療前遺伝子変異スクリーニングを開始した。
④ メソトレキセート投与時の副作用(嘔吐)の重症度がRFC1遺伝子およびABCC5遺伝子に規定される可能性を示した。
② クロバザムの活性中間代謝産物であるN-デスメチルクロバザム血中濃度/クロバザム投与量比および血中N-デスメチルクロバザム血中濃度/血中濃度比に大きな個人差が存在し、その個人差はCYP2C19の遺伝多型により説明できることを示した(p<0.0001)。
③ 関東地区の4カ所の主要な白血病治療施設において、新規発症の急性リンパ芽球性白血病症例を対象とした6-メルカプトプリンの治療前遺伝子変異スクリーニングを開始した。
④ メソトレキセート投与時の副作用(嘔吐)の重症度がRFC1遺伝子およびABCC5遺伝子に規定される可能性を示した。
結論
抗凝固薬ワーファリン・抗てんかん薬クロバザム・抗白血病薬メソトレキセート等について、薬効ないし副作用の発症に遺伝子多型が関与することを明らかにし、治療前遺伝子検査を行う理論的根拠を示した。さらに遺伝子多型の効率的検査方法を確立して効果的薬剤使用のための遺伝子多型スクリーニングシステム構築のためのプロトタイプを示した。
公開日・更新日
公開日
2005-05-12
更新日
-