思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究

文献情報

文献番号
200400422A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 久子(慶應義塾大学医学部(小児科学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 福岡秀輿(東京大学大学院)
  • 徳村光昭(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 高橋孝雄(慶應義塾大学医学部)
  • 長谷川奉延(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急増する思春期やせ症は死亡率の高い難治性心身症として21世紀の少子・高齢化社会に深刻な問題を呈している。成長期の患者の病態と合併症、つまりニ次性徴遅延、卵巣子宮発育不全、脳萎縮、骨粗鬆症等の広汎な臓器障害の解明が急務である。学校における女子の全国調査(平成14)結果は、中学高校6年間の累積発症率が2.3%で、その3分の2が病院未受診であった。また本症の予備軍である「不健康やせ」が中学3年で5.5%、高校3年で13.2%で、学校での予防と早期発見の必要性を明らかにした。われわれの研究は「健やか親子21」の保健水準指標である<15歳の女性の思春期やせ症(神経性食欲不振症)の発生頻度の減少>の実現を目指す。そのために、学校健診データより作成した成長曲線の解析と、自律神経異常の早期兆候である徐脈を指標とする早期発見法、小児科医による早期治療(2次ケア)、および小児科医・小児精神科医連携の集中治療(3次ケア)を統合した対策システムを構築し、ガイドラインを作成する。
研究方法
平成16年度は小児期発症思春期やせ症包括的対策システムとガイドラインの基礎データをまとめる。成長曲線と脈拍測定を指標とする早期発見法、初期および再発兆候としての徐脈、そして内分泌代謝、骨代謝の研究成果を、学校保健と小児科診療における実践的ガイド本にまとめる。
結果と考察
学校保健における早期発見法として以下が有効であった。まず生徒の成長曲線を作り、体重が1チャンネル以上下がり、肥満度-15%以下のやせを呈する生徒を把握する。その生徒を保健室に呼んで脈を測り、徐脈(60/分未満)を合併する場合は病院に紹介する。小児科医による診断治療により、治しやすい初期に病気を食い止め治癒に導く。より重い症例は専門治療につなげる。この1次、2次、3次ケアを「思春期やせ症の診断と治療のためのガイド」にまとめた。病態研究では急性期IGF-1と栄養の相関等の研究その他、循環器研究、骨代謝研究を推進した。第7回国際摂食障害学会に「再発患者の超早期指標としての徐脈」(福島)と「慶応方式思春期やせ症集中治療体制」(渡辺)を発表し、世界に類のない治療アプローチとして注目された。
結論
成長曲線のパターン解析と徐脈の検出を指標とする早期発見法と、小児科医による初期治療、専門的集中治療をあわせもつ包括的診療システムの有効性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-