育児機能低下と乳児虐待の評価パッケージの作成と、それを利用した助産師と保健師による母親への介入のための教育と普及

文献情報

文献番号
200400393A
報告書区分
総括
研究課題名
育児機能低下と乳児虐待の評価パッケージの作成と、それを利用した助産師と保健師による母親への介入のための教育と普及
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 敬子(九州大学病院精神科神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 洋(九州大学病院精神科神経科)
  • 鈴宮 寛子(福岡市東区保健福祉センター)
  • 江井 俊秀(財団法人母子衛生研究会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出産後の母親の育児困難と乳児虐待のリスクを地域保健師や助産師が早期に評価・介入する方法についてマニュアルと、それを主な教材とした教育・研修プログラムを作成する。さらにこのプログラムを実施し、その後の地域介入における育児支援・虐待予防における有効性を検討する。
研究方法
育児困難と虐待兆候を総合的に把握できる自己記入式質問票について国内外文献を概観して検討する。さらに選択された質問票をもとに、使用マニュアルのために主任研究者、分担研究者による研究会議を開催し使用方法の解説などの内容について協議した。
結果と考察
1)地域における育児支援についての文献の概観:
 地域での周産期の母親の精神面支援と育児支援の先行研究を文献的に検討し、(1)母親の精神状態の評価のためにエジンバラ産後うつ病質問票、(2)乳児に対する育児感情の評価のためにロンドン大学精神医学研究所のMarksらにより作成されたボンディング質問票、(3)育児困難な状況の評価のために自作の育児支援チェックリストの3つを採用した。これらを選択した根拠は、(1)は母親の精神面でも重要な産後うつ病のスクリーニングのための臨床的有用性や妥当性が確認されており、国際比較研究も可能である。(2)は、英国において乳児の虐待も含めてボンディング障害についての先行研究が蓄積されているという点である。(3)については、育児困難状況を評価する確立された質問票はなく、産後うつ病と児童虐待の危険因子を文献的に検討し項目を選択し作成した。
2)マニュアルの作成と研修会の実施:
 3つの質問票を1つのパッケージとして含む母子訪問による育児支援マニュアルを作成し、全国の保健所に無料配布した。マニュアルを日本子ども虐待防止研究会福岡大会の分科会において発表・紹介した。同時に実施したアンケートでは、参加者の33%はエジンバラ産後うつ病質問票の使用経験があったが、総合的な研修と指導を望む意見が多く、福岡市で予備的に行った事例にもとづくグループワークは高い評価を得た。今後の研修には、基礎知識と事例にもとづく実践的な内容の両者が必要と思われる。
結論
1)簡潔な自己記入式質問票を組み合わせたマニュアルにより地域での包括的な周産期の育児支援が可能となった。
2)マニュアルの使用と研修により、育児支援の実践を全国的に共有できる。
3)その活動から得られたエビデンスにより、乳児期の虐待発生と予防のモデルを検証し、地域ごとの母子精神保健の数値目標など行政に反映できる指標をもたらす。

公開日・更新日

公開日
2005-06-23
更新日
-