健やか親子21推進のための学校における思春期の心の問題に対する相談システムモデルの構築

文献情報

文献番号
200400373A
報告書区分
総括
研究課題名
健やか親子21推進のための学校における思春期の心の問題に対する相談システムモデルの構築
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 修一郎(昭和大学医学部小児科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 古荘純一(青山学院大学文学部教育学科)
  • 佐藤弘之(昭和大学医学部小児科学教室)
  • 松嵜くみ子(青山学院大学文学部)
  • 根本芳子(太田総合病院)
  • 柴田玲子(湘南医療福祉専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度の研究から、心理・社会的困難を抱える児童の早期発見に小学生版QOL尺度が有用であると考えられた。本年度は対象を拡大して実施すること、子どものQOLと親からみた子どものQOLを比較すること、病児のQOL調査を行い児童の結果と比較すること、をとおして本検査の妥当性・有用性を確認することを研究の目的とした。また、小学生版と同様に、中学生版QOL尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とした。さらに、小学生版QOL尺度をスクリーニングとして試用し、学校における、相談システムの実現可能性を検討することを目的とした。
研究方法
児童のQOL調査は、
①全国的に調査地域を拡大して実施した。
②一公立小学校の全校生に対して実施した。
ⅰ)低得点の児童と教師からみて「気がかりな」児童に対し、小児科医・臨床心理士が面接をおこなった。
ⅱ)親に対し、親用QOL尺度を用いて親からみた子どものQOLを調査し比較した。
ⅲ)5年生全員に対して個別面接を行い、QOL尺度の結果と比較した。
ⅳ)低得点の児童に対する面接結果をもとにして、事後の支援や治療に繋げるシステム構築を行った。
③軽度発達障害や慢性疾患を有する児童およびその親からみた子どものQOL調査を行った。
④公立中学校において中学生版QOL尺度を用いた調査を行い、有用性を検討した。
結果と考察
小学生版QOL尺度は、心理・社会的困難を抱える児童の早期発見のためのスクリーニングツールになりうると確認された。教師は学習および行動面で「気がかりな」児童を問題と考える傾向がみられ、親は、子どものQOLの低下を正しく認識していない可能性があり、教師や親が児童の心の問題を早期に正しく認識するには限界があると考えられた。心理・社会的な困難には、不適切な養育やいじめを含む対人葛藤や軽度発達障害、不安もしくは気分障害の疑いが原因として考えられた。小児科医・心理士が学校と緊密であれば、これらの児童に対する支援が速やかに実施できたことから本研究のシステムは機能するものと考えられた。
中学生版QOL尺度も小学生版と同様の有用性があると考えられた。
結論
心理・社会的困難を抱え、QOLの低下がみられる児童のことを、教師や親は必ずしも看破できない。
小児科医や臨床心理士が、異なる視点から児童をみることにより、支援の必要性の早期発見・支援開始が可能となる。小学生版・中学生版QOL尺度はそのための有用なツールとなりうる。また、それらを用いた、小児科医と臨床心理士が学校と協力して活動する相談システムの有用性も示された。

公開日・更新日

公開日
2005-11-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200400373B
報告書区分
総合
研究課題名
健やか親子21推進のための学校における思春期の心の問題に対する相談システムモデルの構築
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 修一郎(昭和大学医学部小児科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 古荘純一(青山学院大学文学部教育学科)
  • 佐藤弘之(昭和大学医学部小児科学教室)
  • 松嵜くみ子(青山学院大学文学部)
  • 根本芳子(太田総合病院)
  • 柴田玲子(湘南医療福祉専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多様化する価値観や社会環境の変化は子どもたちの生活にも変化を及ぼしている。このような時代の中で心理・社会的困難を抱えている児童・生徒たちが増加し、学校生活にも影響を受けている。我々は以前から近隣の一小学校に健康相談室を開設し、小児科医と臨床心理士が学校と連携し、児童や教師の抱える心理・社会的困難に対応してきたが、全国的にみて同様の試みはほとんどない。
そこで、本研究では小学生版QOL尺度を用いて児童のQOLの低下をスクリーニングすることにより、心の問題を早期発見できるかを検討し、早期支援開始のためのシステム構築が可能であるかを検討することを目的とした。
研究方法
小学生版QOL尺度の妥当性・信頼性の検討、さらに全国的な標準値を得るために、全国の学校に調査を依頼した。
一小学校の全児童に対し本検査を実施し、結果を小児科医・臨床心理士の面接結果や他の検査と比較した。親に親版QOL尺度を実施し、親からみた子どものQOLを検討した。
QOL尺度低得点の児童と教師からみて「気がかりな」児童に対し、小児科医・臨床心理士が面接を実施した。その結果、心理相談・治療などを必要とする子どもに対して、速やかに適切な支援を開始した。
これらの経過を通じて、心理・社会的困難を抱える児童たちを早期発見し支援に結びつけるシステムの構築が可能であるかを検討した。
結果と考察
今回の調査結果から、標準化に向けてさらに詳細な検討が必要であるが、わが国での小学生版QOL尺度の妥当性・信頼性のあることが認められ、全国的標準値を得ることができた。
全校児童に対して行った調査から、本検査がQOLの低下した児童の早期発見、心理・社会的困難に対する早い支援開始に役立つと考えられた。また児童のQOL低下を親が気づいていない可能性があり、教師は学習面・行動面の問題をみる傾向があった。QOL尺度の導入、学校への小児科医・臨床心理士の参加によって、表面からは見えにくい問題の早期発見から支援開始へのプロセスをスムーズにできると考えられた。
また、中学生版QOL尺度を試用した調査では、小学生版と同様の信頼性があると考えられた。
結論
本研究の結果、心理・社会的困難を抱える児童を、QOLの低下という観点から、早期に発見することが、QOL尺度をスクリーニング検査として利用することで可能であることが示された。小児科医や臨床心理士は、教師や親とは異なる視点から子どもをみることが可能であり、彼らの学校現場への参加が、心の問題の早期発見や支援開始に有用であった。限られた時間と人と予算の中で、汎用できるシステムを構築していくことが今後の重要な課題である。

公開日・更新日

公開日
2005-11-08
更新日
-