霊長類を用いたアルツハイマー病に対する経口治療薬の開発とその臨床応用の試み

文献情報

文献番号
200400336A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類を用いたアルツハイマー病に対する経口治療薬の開発とその臨床応用の試み
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 和佳子(国立長寿医療センター(老化機構研究部 代謝研究室))
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木樹理(京都大学霊長類研究所)
  • 辻本賀英(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 直井信(財団法人岐阜県国際バイオ研究所)
  • 駒野宏人(国立長寿医療センター)
  • 新田淳美(名古屋大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)は最も患者数の多い神経変性疾患であり、65歳以上の高齢者の約100人に5人が罹患すると報告されている。ADに対する従来の治療法は神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑制する対症療法であり、神経細胞の変性を抑制するものではない。この問題を解決する為には多数の患者に簡便に施行でき、安全性の高い神経保護療法が必須であり、研究を行った。
研究方法
1)propargylamine化合物の中による神経保護効果について霊長類を用いて検討するとともに、その効果の客観的評価法を確立するための研究を行った。オスニホンザルに対し、propargylamine化合物であるrasagiline を投与した。薬剤の安全性について確認するとともに、神経保護作用をもつ蛋白、特に神経栄養因子の増加効果とAβ生成低下効果について、脳脊髄液の分析を行うことにより検討を行った。2)propargylamine化合物の作用部位、すなわち標的蛋白を同定するとともに、ミトコンドリアにおける細胞死シグナルに関わる分子について明らかとするため遺伝子改変マウスと培養細胞を用いた研究を行った。
結果と考察
1)の結果、rasagilineはニホンザルに全身性の副作用を引き起こさず、行動学的にも大きな変化をきたさなかった。rasagiline投与後に神経栄養因子の増加傾向と、Aβ1-42の低下傾向が認められた。2)に関しては、ミトコンドリアにおける膜透過性に関わる因子、特にcyclophilin D が酸化ストレスあるいはCa負荷による細胞死に決定的な役割を果たすことが証明された。これらの刺激はまさにアルツハイマー病における神経細胞死において、主要な役割を果たしていることが報告されている。さらに、アミロイド前駆蛋白(APP)を過剰発現した細胞株では、酸化ストレスに対して脆弱となっており、その原因の一つとしてBcl-2などの細胞死シグナル抑制蛋白の低下が認められた。
結論
propargylamine化合物は神経保護薬として有望であり、今後、薬剤の効果を得るための至適量および投与方法を確立する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-