高齢者の筋・骨格系の痛みに対する鍼灸及び徒手的治療法の除痛効果に関する基礎的および臨床的研究

文献情報

文献番号
200400334A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の筋・骨格系の痛みに対する鍼灸及び徒手的治療法の除痛効果に関する基礎的および臨床的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水村 和枝(名古屋大学 環境医学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,272,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若年および老齢ラットに筋肉痛・関節痛のモデルを作成し、このモデルを用いてその痛みの神経機構および鍼灸・徒手的治療法の除痛機構を解明し、最も有効性の高い方法を臨床的に明らかにすることを目的とする。
研究方法
ラット、ウサギ、ヒトを用い、筋痛モデルは主として伸張性収縮(ECC)により作成し、圧痛閾値測定、逃避反射筋電図測定、単一神経記録、脊髄後角ニューロン記録、
筋神経・後根神経節細胞の免疫組織化学を実施した。経皮的圧痛覚閾値測定をヒト皮膚表面麻酔およびコンピューターシミュレーションにより検討した。鍼灸・バイブレーション・運動治療の効果をヒト筋痛モデルまたは患者に実施した。鍼治療では、鍼を刺入しないSHAM鍼治療を考案し比較に用いた。
結果と考察
加齢(80週齢と130週齢ラット)によりECCによる筋痛覚過敏が強くなり、かつ遷延し、筋圧痛閾値や反射性屈曲収縮を起こす筋刺激に必要な電流量も高くなる傾向があった。前者の所見は、高齢者における持続性筋痛と関連があると思われる。ECCに虚血負荷して慢性化した筋痛覚過敏状態が、NMDA受容体拮抗薬で抑制された。脊髄の興奮性増大の関与を示唆した。ECCに繰り返し寒冷ストレスを5日間負荷することにより、広汎で強くかつ持続の長い筋痛覚過敏状態を生じた。筋炎症、神経因性疼痛状態でASIC,各種ATP受容体の発現が変化した。神経因性疼痛モデル(坐骨神経絞扼)では筋も痛覚過敏状態にあった。また筋のミオシン重鎖アイソファオームの変化が筋の伸張を行うことにより改善され、神経因性疼痛治療の1つの可能性が提示された。経皮的圧痛測定法では、先端直径2mm以上の大きなプローブであれば筋痛覚がかなりよく反映されることを明らかにした。ヒト実験的筋痛状態でバイブレーションによりH波が抑制された。腰痛、頚部痛を持つ高齢者に対しトリガーポイント治療を実施し、Sham治療群よりも統計的に有意に有効であることを確認した。また、経穴治療と比べてもトリガーポイント治療がより有効であった。高齢膝痛患者に対する運動療法(下肢伸展挙上訓練)の有用性が示唆されたが、例数が少ないためさらに検討を続けなければならない。
結論
筋痛とその鍼・徒手的治療法の基礎的メカニズムがある程度解明された。また高齢者腰下肢痛・頚部痛に対する鍼治療の有効性を科学的に示すことができた。基礎と臨床との連携を深め留ことの有効性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200400334B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の筋・骨格系の痛みに対する鍼灸及び徒手的治療法の除痛効果に関する基礎的および臨床的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水村 和枝(名古屋大学 環境医学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若年および加齢ラットに筋痛のモデルを作成し、このモデルを用いてその痛みの神経機構および鍼灸・徒手的治療法の除痛機構を解明し、また、高齢者の筋・筋膜性疼痛に対し鍼灸、徒手、運動療法を実施してその効果を評価し、最も有効性の高い方法を明らかにすることを目的とする。
研究方法
ラット、ウサギ、ヒトを用い、筋痛モデルは主として伸張性収縮(ECC)により作成し、圧痛閾値測定、逃避反射筋電図測定、単一神経記録、脊髄後角ニューロン記録、
筋神経・後根神経節細胞の免疫組織化学を実施した。経皮的圧痛覚閾値測定をヒト皮膚表面麻酔およびコンピューターシミュレーションにより検討した。鍼灸・バイブレーション・徒手・運動治療の効果をヒト筋痛モデルまたは患者に実施した。鍼治療では、鍼を刺入しないSHAM鍼治療を考案し比較に用いた。
結果と考察
ECC負荷により筋に痛覚過敏が出現し、加齢ラット(130週齢)では痛覚過敏からの回復が遅れた。この所見は、高齢者における持続性筋痛と関連があるものと思われる。鍼・徒手治療で良く使われるトリガーポイント様の限局した痛覚過敏部位をECC後の筋に見いだした。ECCに虚血または繰り返し寒冷ストレス負荷により慢性筋痛モデルを作成した。この筋痛覚過敏状態はNMDA受容体拮抗薬で抑制され、脊髄の興奮性増大の関与が示唆された。ECCにより痛覚過敏状態にある筋の痛み受容器の機械感受性の亢進を明らかにし、この受容器のECC後筋痛覚過敏への関与を示唆した。筋支配無髄求心神経の脊髄内終枝パターン、筋内神経分布を明らかにした。筋炎症、神経因性疼痛状態におけるASIC, 各種ATP受容体発現の変化、脊髄ニューロンの受容野の変化を明らかにした。神経損傷(坐骨神経絞扼モデル)ラットで、筋も痛覚過敏状態になり筋代謝が変化するが、筋伸張により改善された。ヒト筋痛モデルでは、バイブレーションによりH波が抑制された。筋痛覚測定には先端直径2mm以上のプローブを用いる必要があることを明らかにした。高齢者の腰痛、頚部痛に対しトリガーポイント鍼治療が、SHAM治療、伝統的経穴治療よりも有効であった。高齢膝痛患者に実施した徒手・運動療法は全体的健康感を改善する傾向が見られた。
結論
基礎研究と臨床研究との連携により筋痛とその鍼・徒手的治療法のメカニズムについて理解が深まり、また鍼治療の有効性を科学的に示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-