高齢者の脳機能障害解明とリハビリテーションに関する研究

文献情報

文献番号
200400304A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の脳機能障害解明とリハビリテーションに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
西谷 信之(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所・感覚機能系障害研究部研究部 感覚認知障害研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 山脇 成人(広島大学大学院・医歯薬総合研究科・先進医療開発科学講座・精神神経医科学)
  • 伊藤 和幸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所・福祉機器開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
10,066,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳機能の老化と障害の病態評価と情報処理機構の解明に基づき、意欲の向上・自主性の回復のための脳賦活の手法を確立し、高齢機能障害者のリハビリテーションの効率を高める。
研究方法
1)脳統御機構の解明研究では、音周波数に基づく振動覚刺激と皮膚伸展刺激に対する情報処理機構解明を行った。306チャンネル全頭型MEGを用いて、大脳皮質の活動を評価した。2)脳血管性うつ病(VD)の病態解明と脳賦活法の研究では、50歳以降に発症した大うつ病で、初回入院の患者を対象とし、加療後の健康状態を調査票にて質問した。MRI所見よりVD群および非VD群に分け、両群間でうつ病相の期間、回数、入院回数、その他の予後等を比較した。VDに対して、言語流暢性、手指タッピング、視覚刺激各課題を用い、fMRIにより脳機能を評価した。3)機器開発研究では、脳活動計測用の6指刺激装置を非磁性体とし、また仮現運動刺激も可能となるように設計した。(倫理面への配慮)研究概要を各所属機関の倫理委員会に諮り、また被験者へのインフォームドコンセントを徹底した。
結果と考察
1)振動刺激と皮膚伸展刺激による再現性のある脳活動の賦活は、全身の皮膚神経支配領域に従った刺激呈示ができ、多彩な脳活動賦活と評価が可能であることを示す。音周波数を変換した振動刺激による両側一次聴覚野の賦活は、脳組織の可塑性に基づく機能再生や機能代償を考慮する上で重要な所見である。2)VDでは非VDと比較してうつ病相期間、入院回数、認知症の発症も有意に高かった。VDではうつ病自体の長期的予後が悪く、持続的な器質性の認知障害を招き易いことが判明した。老年期うつ病の中でも特にVDにおいて認知障害に留意した治療の必要性が示唆された。いずれの賦活課題でも、非VDに比較しVDでは活性領域が小さく、VDでの前頭葉の低活動が、持続的な認知障害の発症に関っていると考えられた。3)脳活動賦活用の刺激装置の非磁性化や仮現運動刺激呈示を可能にし、携帯型の装置を開発した。これらは高齢障害者が自ら操作を行い得る利便な脳賦活・機能訓練用装置と考えられる。 
結論
様々な身体部位に詳細な情報表示が可能な操作性の良い装置による脳賦活が、高齢脳機能障害者の自主性と機能の回復および機能賦活に有効であり、認知リハビリテーションの手法の確立にも貢献し得ることを,本研究結果は示している。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-