高齢者の口腔乾燥症と咀嚼機能および栄養摂取との関係

文献情報

文献番号
200400278A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の口腔乾燥症と咀嚼機能および栄養摂取との関係
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
野首 孝祠(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池邉 一典(大阪大学 歯学部附属病院)
  • 古谷 暢子(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、まず高齢者の咀嚼能率と栄養状態との関係を明らかにし、次に唾液分泌について、歯の状態ならびに咀嚼や味覚などの口腔機能との関係について検討することである。
研究方法
調査対象者は、自立した生活を送っている60歳以上の1186名(男性606名、女性580名)とした。対象者に対して、咬合力、咀嚼能率、唾液分泌量の測定や味覚検査を行った。咀嚼能率は、検査用グミゼリーを30回自由咀嚼させたのちの咬断片表面積増加量とした。最大咬合力は、デンタルプレスケールを用いて測定し、唾液分泌速度(ml/分)は、咀嚼時の全分泌唾液量から算出した。味覚検査はろ紙ディスク法とし、検査部位は、舌尖正中線より約2㎝離れた舌縁(鼓索神経支配領域)とした。統計的分析は、χ2独立性の検定とロジスティック回帰分析を用い、有意水準は5%とした。
結果と考察
低体重(BMIが18.5未満)を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果、性別(オッズ比: 2.71)とともに、咀嚼能率の低下(オッズ比:2.66)が有意な説明変数として選択された。唾液分泌低下(0.5ml/分未満)を目的変数とした回帰分析の結果、降圧薬と咬合力の低下(オッズ比:2.19)が有意な説明変数として選択された。高齢者において味覚低下と判断された者の割合は、最も低い塩味で34%、最も高い酸味で54%となった。また、高齢者の味覚の認知閾値は、20歳代の学生と比較して、四基本味のいずれも有意に高く、回帰分析の結果、四基本味全てにおいて味覚が低下していた者(13%)は、男性(オッズ比:4.29)に多く、唾液分泌量の低下(オッズ比:4.26)と有意な関連が認められた。本研究の結果より、歯の欠損や咬合状態など口腔内の形態的・静的な変化より、機能的、動的な咀嚼能率が低体重と最も密接な関連があったことは興味深い。このことは、高齢者の栄養状態の維持について、咀嚼機能が最も重要であり、それを評価することの重要性を示唆している。
結論
唾液分泌の低下は、咀嚼能率ならびに味覚に関連があり、咀嚼能率は低体重と関連が認められた。したがって、唾液分泌の低下ならびに咀嚼機能の低下は、高齢者の栄養状態、さらには全身の健康を損なうことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400278B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の口腔乾燥症と咀嚼機能および栄養摂取との関係
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
野首 孝祠(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池邉 一典(大阪大学 歯学部附属病院)
  • 古谷 暢子(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
咀嚼能力の客観的評価法を確立し、高齢者の咀嚼能力について主観的評価と客観的評価の関係について検討する。次に、高齢者の咀嚼能率と栄養状態との関係を明らかにし、唾液分泌が咀嚼や味覚などの口腔機能に及ぼす影響について検討する。
研究方法
検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率検査を行う上で、グミゼリーから溶出したグルコース濃度の測定値に影響を与える条件について検討を行った。次に、咀嚼に対する満足度と食品についての摂取可能度などの主観的評価と咀嚼能率検査の結果を比較検討した。さらに、60歳以上の1186名を対象に、咬合力、咀嚼能率、唾液分泌量の測定や味覚検査を行った。低体重(やせ)は、BMIが 18.5未満の者とした。統計的分析は、χ2独立性の検定ならびに、ロジスティック回帰分析を用い、有意水準は5%とした。
結果と考察
1.検査用グミゼリーの咬断片表面から溶出されるグルコース濃度は、咬断片の水洗時間、溶出温度、溶出時間に大きな影響を受けた。2.検査用グミゼリーの咬断片表面積増加量は、グルコース濃度から、回帰式を用いて、正確に算出可能であった。3.咀嚼能率は咬合支持によって有意な差がみられ、摂取可能食品数と弱い正の相関がみられた。4.咬合支持が同じ場合、咀嚼に対する満足度や摂取可能食品の数によって、咀嚼能率は、必ずしも差はみられなかった。5.低体重は、咀嚼能率の低下(オッズ比: 2.66)と有意な関連がみられた。6.唾液分泌低下は、咬合力の低下(オッズ比: 2.09)と有意な関連がみられた。7.味覚の認知閾値は、20歳代の学生と比較して有意に高く、味覚の低下は、唾液分泌量の低下(オッズ比:4.26)と有意な関連が認められた。本研究の結果より、咀嚼の主観的評価は客観的評価と必ずしも一致しないことから、正確で再現性の高い咀嚼能力検査法の必要性が示された。また咀嚼能率の低下は、食生活に影響を及ぼし、低体重を生じることが示唆された。
結論
1.検査用グミゼリーを用いた咀嚼能率検査法は、正確で再現性の高い結果が得られた。2.咀嚼能率は、咀嚼の主観的評価と必ずしも一致しなかった。3.唾液分泌の低下は、咀嚼能率ならびに味覚に関連があり、咀嚼能率は低体重と関連が認められた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-