高齢者の終末期ケアの医療と福祉の分担と連携に関する研究

文献情報

文献番号
200400248A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の終末期ケアの医療と福祉の分担と連携に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 義直(名古屋大学大学院 医学系研究科 健康社会医学専攻 社会生命科学講座 法医・生命倫理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 久幸(国立長寿医療センター 内科)
  • 中島 一光(国立長寿医療センター 呼吸器科)
  • 武田 章敬(国立長寿医療センター 痴呆神経内科)
  • 山本 楯(山本医院)
  • 南 美知子(国立長寿医療センター 看護部)
  • 井上 豊子(介護老人保健施設ルミナス大府 看護・介護部)
  • 丸口 ミサエ(国立看護大学校 成人看護学 終末期看護担当)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体能力や精神的な能力が衰えていることの多い高齢者における終末期ケアが倫理的に行われる方策について検討することを目的としている。とりわけ高齢者では本人の意思の確認が困難な例も少なくないので、そのような例で高齢者の尊厳を守る配慮が重要な課題となる。
研究方法
本研究では、まず日本における高齢者の終末期ケアについての問題点を現場に即して整理することを試みた。調査対象は、主として高齢者の医療を行っている地域基幹病院とし、各症例についての終末期医療の流れについて分析した。さらに海外に事例について介護の先進国であるドイツと世界で始めて安楽死を法制化したオランダを視察し、それぞれの国での終末期ケアにおける高齢者の意思確認の状況を調査した。
結果と考察
地域基幹病院における症例の調査では、本人の事前指示がなされていた例はまれであり、また自己決定能力がない症例が多く、終末期の治療方針の決定にあたって家族に頼らざるを得ない実態が明らかになった。したがって、本人の事前指示を援助する方策が重要と考えられる。今回のドイツの調査では、高齢者の終末期ケアで本人の意思に基づかないままに救命処置をしないことや医療を打ち切ることには慎重であった。オランダでは、厳密な手続きで安楽死が行われているが、安楽死は全死亡の2%以下と極めて特別な状態であり、緩和医療が中心であった。そして、いずれの国でも、本人の事前指示がない場合は慎重に本人の考え方を類推する努力をしていた。また、認知症の場合には必要に応じて第三者を法定代理人として認定することも行われており、参考となった。
結論
地域基幹病院における症例の調査では、高齢者の終末期では自己決定能力がない症例が多いことなどが明らかになった。そのため、あらかじめ本人が元気なときに終末期ケアについての事前指示を作成していくことの普及が必要と考えられた。それでも、生命維持を事実上取りやめるなどの重大な判断の場合は家族に頼るだけではなく、何らかの形で第三者の参加を検討していくことも必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-14
更新日
-