活性蛋白の非注射型ナノDDS製剤

文献情報

文献番号
200400244A
報告書区分
総括
研究課題名
活性蛋白の非注射型ナノDDS製剤
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水島 裕(東京慈恵会医科大学DDS研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 上野晃憲(東京慈恵会医科大学DDS研究所)
  • 鈴木潤(株式会社LTTバイオファーマ)
  • 上野幸生(東京慈恵会医科大学DDS研究所)
  • 水島徹(熊本大学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
50,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまでにターゲットプラス徐放性のナノ粒子製剤、たんぱく医薬の徐放製剤、炭酸カルシウムナノ粒子などを開発している。これらは静脈内・皮下・経皮投与で適用可能である。本研究では、それらの技術を応用し、活性たんぱく医薬をナノ粒子化して経皮・経粘膜吸収用の製剤開発を目的とした。
研究方法
インスリン製剤について検討した。
結果と考察
インスリンを脂溶化するために金属イオンによる不溶化を検討し、最適な亜鉛イオンで均一な懸濁液が作製できた。次に、疎水基と陰イオン基を有する有機化合物添加を検討し、ミリスチン酸とTween80の添加が最適であるとの結果を得た。更に、カルシウムイオンと炭酸イオンを順次付加して、被覆したナノ粒子を作製した。この粒子の粒径は作製条件により種々のものが得られ、小さなもので10?20nm、通常で100?300nm、大きなもので500nmになった。各粒径のナノ粒子を背部皮膚に塗布し、血糖値と血中インスリン値を測定した。正常マウスと糖尿病マウスにおいて、血糖値下降が1時間目から徐々に現れ始め6時間後でもなお継続していた。血中インスリン濃度の上昇も確認された。なお、現インスリン製剤の皮下投与では、30分後に最大効果であったが一過性であったのとは対照的であった。炭酸カルシウム被覆をしない粒子の経皮吸収は極端に悪いものであった。従って、経皮吸収に炭酸カルシウム被覆が重要な要因である。経皮投与したマウス皮膚切片を二抗体免疫染色で検討し、角質層下部にインスリンの存在を認めた。更に、ポリスチレン製ナノ粒子で経腸吸収を検討すると、50nm程度の粒子の粘膜への吸着を示し、それ以上の大きさでは経腸吸収には適さなかった。
結論
今年度は製剤の作製方法の条件検討を広範囲に行ったが、粒子径を自在にコントロールするまでには至っていないことや封入率がそれほど高くないことなど、まだ改善すべき点がある。インスリンナノ粒子製剤を経皮投与した場合に生体内吸収が生じて持続的薬理効果も生じたので、注射投与に代わり得るものとなる。粒子モデルのポリスチレン粒子の結果から、経腸吸収用製剤の可能性が示唆された。しかし、現在血糖降下作用が未だ十分ではないとしても、このままの製剤でもヒトに応用することは可能であり、来年度以降には臨床研究を行うべく準備を進めたい。それと共に本製剤の改良、全く別のナノ粒子での製剤化などの研究も進める。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-