エストロゲンによる周生期脳インプリンティングを中心とした、個体レベルでの核内受容体シグナル検出系の確立

文献情報

文献番号
200400210A
報告書区分
総括
研究課題名
エストロゲンによる周生期脳インプリンティングを中心とした、個体レベルでの核内受容体シグナル検出系の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
石塚 真由美(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田正一(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生体は農医薬品、環境汚染物質の多くに対して、特に周生期に高い感受性を持っており、この時期の外来化学物質への曝露は不可逆的な毒性影響を引き起こすことが懸念されている。中でも内分泌撹乱化学物質としてエストロゲン作用を持つ化学物質への曝露は、周生期ステロイドホルモンによる脳インプリンティングを阻害し、正常な性分化を撹乱することが報告されている。周生期における脳インプリンティングには、アロマターゼによるテストステロン→エストラジオールの変換が不可欠である。しかし、多くの医薬品・環境化学物質に関して、神経培養細胞を用いた曝露実験では、神経細胞に対する毒性影響は検出することができるが、周生期における脳インプリンティングへの影響や、シトクロムP450(CYP)などの薬物代謝酵素による生体内代謝、ホルモン受容体の発現や活性化機構の臓器別の違いを考慮した、in vivoでの環境化学物質の毒性を検出することはできない。そこで、本研究では、エストロゲン結合サイト下流にレポーター遺伝子を結合し、ゲノムに導入することで、エストロゲンによる転写活性化を個体レベルで検出することができるトランスジェニック動物を作成し、エストロゲンの周生期における生理的機能解明と共に、in vivoで医薬品・環境化学物質の毒性影響を検出する系を確立することを目的とした。また、環境化学物質の標的遺伝子群のスクリーニングや行動解析を行い、環境化学物質が周生期脳に与える影響を明らかにする。
研究方法
レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだベクターを作成し、トランスジェニック動物を作成する。また、光in vivoイメージングの条件検討を行う。
結果と考察
400個のラット卵にエストロゲン結合サイト-ルシフェラーゼ遺伝子を導入し、14 lineのfoudnerを得た。得られたラットを用いて、ジエチルスチルベストロールなど合成エストロゲンを投与し、そのシグナルの誘導について調べ、phenotypingを行ったところ、エストロゲンによって転写活性が個体レベルで検出できるlineを得た。
結論
エストロゲンシグナルをliving animalで検出できるトランスジェニックラットを作成した。また、光in vivoイメージングのための条件について検討したところ、発光に加え、励起光源の強化と長波長(近赤外領域)の蛍光色素を使用することで、蛍光でのin vivo深部撮影が可能であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2005-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200400210B
報告書区分
総合
研究課題名
エストロゲンによる周生期脳インプリンティングを中心とした、個体レベルでの核内受容体シグナル検出系の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
石塚 真由美(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田正一(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生体は農医薬品、環境汚染物質の多くに対して、特に周生期に高い感受性を持っており、この時期の外来化学物質への曝露は不可逆的な毒性影響が懸念されている。本研究では、エストロゲンによる転写活性化を個体レベルで検出することができるトランスジェニック動物を作成し、エストロゲンの周生期における生理的機能解明と共に、in vivoで医薬品・環境化学物質の毒性影響を検出する系を確立すること、周生期のステロイドホルモンやその標的因子、環境化学物質の影響について明らかにすること、を目的とした。
研究方法
400個のラット卵にエストロゲン結合サイト-ルシフェラーゼ遺伝子を導入した。また、光シグナルの検出のために、ルシフェリン以外にも、様々な波長を持つ蛍光色素をラット新生仔あるいはマウスに取り込ませ、個体in vivoにおけるイメージングを試みた。
一方、環境化学物質の周生期曝露が脳神経の発達にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、ラットを胎生仔期・新生仔期に低濃度の内分泌撹乱化学物質ビスフェノールAに曝露し、脳の発達や行動に対する影響を調べた。また、cDNAマイクロアレイ法を用いて、同じく、ビスフェノールAなどエストロゲン作用を持つ環境汚染物質によってその発現が変動する脳神経系の遺伝子群を解析した。
インプリンティング時におけるエストロゲンの標的遺伝子を明らかにするため、マイクロアレイ法を用いて、周生期の視床下部において、テストステロンシャワーによって引き起こされるmRNAプロファイルの変動のスクリーニングを行った。
結果と考察
in vivoでレポーターアッセイを行うことのできるトランスジェニックラットを作成した。また、胎仔期・新生仔期のビスフェノールA低濃度曝露によって、bcl-2、bax、caspase3などのアポトーシス関連遺伝子の発現レベルが変動しており、周生期の環境化学物質への曝露が脳神経細胞の増殖に影響を与える可能性が明らかとなった。さらに、周生期のエストロゲンの標的因子として、新規にGABA-Bやシヌクレインなどを同定した。
結論
本研究によって、in vivoでエストロゲンシグナルを検出できるラットを作成し、さらに、周生期の脳ステロイド代謝および、エストロゲンの標的遺伝子、そしてそれらに対する環境化学物質の影響を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-02
更新日
-