バイオナノ粒子による治療用生体高分子デリバリーシステムの開発

文献情報

文献番号
200400187A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオナノ粒子による治療用生体高分子デリバリーシステムの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 均(東京大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
  • 金田 安史(大阪大学大学院 遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在国民医療費の高騰が問題となっており、死因の上位を占める難治性疾患に対して安全で有効性の高い治療薬を開発する事が切望されている。そのためには、従来のような医薬品ではなく、ナノメディシン医薬のような新しい概念に基づく先端医薬品を開発する必要がある。そこで、本研究開発においては、ジェノミディアが、大阪大学と産学共同で開発中のバイオナノ粒子(HVJ-E)技術による新規治療技術の開発を行なった。
研究方法
本年度は、標的化技術、新規癌免疫療法開発、製造用材料調製、安全性について研究を行なった。標的化検討では、磁性体粒子で修飾したバイオナノ粒子による、遺伝子導入効率の増強を検討した。癌免疫療法の確立では、マウス癌細胞を皮内に移植する腫瘍モデルを用いて、癌免疫誘導とその長期持続性、薬効メカニズム、抗癌剤との併用効果について検討を行った。製造用材料の整備では、GMP準拠のパイロットプラントでマスターウイルスバンクの調製を行い、GLP基準の検査により病原体の混入がない事を確認した。安全性の検討では、マスターバンクで製造したバイオナノ粒子を使用して、マウス静脈内投与での安全性を検討した。
結果と考察
磁性体粒子を化学的に修飾して、遺伝子封入HVJ-Eと混合後に培養細胞、生体臓器への導入効率を検討した結果、標的化により導入効率が著明に増強される事が明らかとなった。癌細胞を移植した腫瘍動物モデルでの検討では、抗癌剤封入HVJ-Eを腫瘍組織に投与する事で、長期持続性の癌免疫を誘導できる事が明らかとなり、そのメカニズムは、HVJ-Eによる癌細胞特異的な細胞障害性Tリンパ球の誘導、樹状細胞の分化・成熟の誘導、サイトカインの誘導である事が示唆された。更に厚生労働省などのガイドラインに従って作製したマスターバンクを使用して製造したHVJ-Eの性状を検討した結果、従来と比較して、粒子生産効率の向上が認められた上に、致死量を指標とした安全性が向上する事が明らかとなった。
結論
本年度の研究で、磁性体粒子によるHVJ-Eの標的化技術を確立する事が出来た。また、HVJ-Eの臨床応用に必要な製造用材料を整備する事が出来た。更に、HVJ-Eを利用した新規癌免疫療法は、持続性がある上に、抗癌剤との併用により有効性が増強される事が明らかとなった。今後は、臨床応用の開始のために、安全性、薬効薬理、GMP製造などのデータを取得して、数年以内に臨床応用を開始する事を目指して研究を継続する。

公開日・更新日

公開日
2005-08-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400187B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオナノ粒子による治療用生体高分子デリバリーシステムの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 均(東京大学 農学部)
研究分担者(所属機関)
  • 金田 安史(大阪大学大学院 遺伝子治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化に伴う医療費の増加が社会問題となっており、画期的な先端医薬品の開発が切望されている。そのような背景のもと、病因遺伝子を直接標的とする 「ゲノム創薬」 により、難治性疾患に対して新規医薬品を開発する動きが国内外で活発化している。本研究では、ジェノミディアが、大阪大学と共同開発している新規バイオナノ粒子(HVJ-E)を利用して、「ゲノム創薬」による先端医薬品開発を行い、従来の医薬品では治療が困難であった疾患を、安全かつ有効に治療出来るようにすることを目的として研究開発を行った。
研究方法
マウス腫瘍モデルにより、抗癌剤封入HVJ-Eによる腫瘍縮小効果、連続投与の効果、癌免疫誘導と持続性を検討して、新規癌免疫療法の確立を行った。また、薬効メカニズム解析のために、腫瘍内浸潤細胞、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、樹状細胞分化・成熟、サイトカイン産生の各項目の検討を行った。並行して、HVJ-Eの安全性評価のために、マウスへ単回または連続投与し、その影響を検討した。更に、医薬品製造用にGMPプラントでマスターバンクを作製し、病原体混入をGLPグレードで検査した。HVJ-Eの標的化は、粒子表面を硫酸プロタミンや磁性体粒子で修飾し、遺伝子発現または蛍光顕微鏡観察で導入効率を評価した。
結果と考察
担癌マウスに抗癌剤封入HVJ-Eを3回投与した結果、80%の動物で腫瘍が消失した。また、腫瘍消失後に癌細胞を再移植すると、80%の動物で癌が拒絶され、その効果は6ヶ月持続する事が明らかとなった。安全性の検討では、静脈内投与の高用量群で赤色尿が認められる事、概算LD10は想定最高投与量の10%程度である事が明らかとなった。確認申請のための材料整備では、細胞とウイルスのバンクを作製し、ガイドラインに従って検査を行ない、マスターバンクとした。標的化に関しては、磁性体粒子や硫酸プロタミンでHVJ-Eベクター粒子を修飾する事で、肝臓や肺への標的化が可能になった。
結論
3年間の研究により、HVJ-Eによる新規癌免疫療法の臨床応用に必要な基礎データ(薬効、安全性)と、製造用材料の整備を行う事が出来た。本研究成果である新規癌免疫療法で誘導される免疫は長期継続型であり、従来の治療法で課題となっていた持続性の問題を解決できる可能性がある。また、種々の抗癌剤との併用が有効である事が明らかとなっており、癌の新しい治療法として期待できる。更に、確立した標的化技術を利用する事で、有効性を高めることが出来ると期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-08-11
更新日
-