細胞内動態制御機能を有する新規細胞選択型ナノ遺伝子キャリアの開発と遺伝子治療への応用

文献情報

文献番号
200400185A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞内動態制御機能を有する新規細胞選択型ナノ遺伝子キャリアの開発と遺伝子治療への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
川上 茂(京都大学大学院(薬学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 奥田 竜也(財団法人 医療機器センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、細胞内動態を制御する新規機能性脂質の科学的根拠に基づいた設計・合成を行い、既存のin vivoレベルでの細胞選択的デリバリーシステムに組み込み、申請者らがこれまでに培ってきた生体内および細胞内動態解析技術を用いた定量的な体内動態解析ならびに物理化学的手法を用いた物性評価を行うことで、in vivoにおける高効率な遺伝子導入を可能とするキャリア構造を最適化し、新規多機能性標的指向型ナノ・遺伝子キャリアを創製し、最終的には遺伝子治療への応用を目指す。
研究方法
標的細胞へ取り込まれた後の細胞内動態を制御させることを目的として、これまでの脂質のスペーサー部にpH緩衝能により細胞内動態を改善できることが知られるヒスチジンを導入した新規ガラクトースまたはマンノース/ヒスチジン (His) 修飾コレステロール誘導体 (Gal or Man-His-C4-Chol) を設計・合成した。合成したMan-His-C4-Cholに関する物性ならびに遺伝子導入能の評価を行うため、Man-His-C4-Chol含有リポソームを調製しpDNAとの複合体を形成させ、複合体の平均粒子径を動的光散乱法により測定し、また、マウスに対して種々のカチオン性リポソーム複合体を腹腔内投与した後、腹腔滲出細胞(APCs)、大網、リンパ節を摘出し、各細胞での遺伝子発現を評価した。
結果と考察
Man-His-C4-Chol含有リポソームを用いた遺伝子導入能評価の結果、マンノースレセプターが高発現している免疫担当細胞が多数存在するAPCsおよびリンパ節において対照のリポソーム複合体群よりも有意に高い活性が認められ、ヒスチジン導入により細胞内動態改善が行える可能性が示された。また、Man-His-C4-Chol含有リポソームの場合、対照のリポソームよりも低い電荷比で調製した場合においても高い遺伝子発現を示すという特長を有することが明らかとなった。したがって、生体へ投与後の生体成分との非特異的吸着が抑制された状態での遺伝子導入が可能であり、標的細胞に対する選択性の改善も期待できる。
結論
新規機能性脂質、Man-His-C4-Chol含有リポソームが、in vivoにおける有効な多機能性標的指向型(体内/細胞内動態制御型)ナノ・遺伝子キャリアとなり得る可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-