霊長類を用いた脳梗塞モデルの遺伝子治療研究

文献情報

文献番号
200400065A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類を用いた脳梗塞モデルの遺伝子治療研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(国立大学法人東京大学(大学院農学生命科学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 寺尾恵治(厚生労働省国立感染症研究所(筑波霊長類センター))
  • 久恒辰博(国立大学法人東京大学(新領域創生科学研究科))
  • 井上誠(株式会社ディナベック研究所(ベクター開発室))
  • 小野文子(社団法人予防衛生協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
42,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の人口動態解析では2030年に65歳以上の高齢者が30%以上を占める超高齢化社会となる。こうした状況は先進国の中で日本が最初であり、モデルとなる国は存在しない。従ってこの弊害をどう克服するかは独自に解決する必要がある。なかでも血管性認知症は患者数の多さ、高齢者のQOLの低下、社会的な負担の増大から、深刻な疾患の1つである。本研究班はヒトに近縁な霊長類を用いて微小血管、中大脳動脈、全脳虚血モデルを作成しウイルスベクターを用いて有効な遺伝子治療法を開発することを目的とする。
研究方法
 我が国で独自に開発された改良型センダイウイルスベクターを用い、サル類で独自に開発したラクナ梗塞モデル、マイクロバルーンカテーテルを用いた中大脳動脈梗塞、全脳虚血モデルを対象に遺伝子治療を試みる。モデルの基礎的・臨床的評価系を確立し、遺伝子治療の効果は高次認知機能、運動機能試験、fMRI、病理形態学的検索を行う。 
結果と考察
 センダイウイルスベクターに関しては大量生産可能なパッケージング細胞を作出し、M,F,HN 3遺伝子を欠失したベクターの構築に成功した。微小梗塞モデルではカニクイザルを用いて高い再現性で白質部位に巨大な軸索損傷を形成する世界で始めてのラクナ性脳梗塞モデルを開発した。免疫組織検索では白質領域に広範な炎症反応が誘起されていることが明らかとなった。中大脳動脈梗塞モデルではX線透視下で大腿動脈よりマイクロバルーンカテーテルを挿入し梗塞を誘発した。処置後の病理検索では大脳皮質における神経細胞死とミクログリアによる神経食現象認められた。脳蛋白・脳脊髄液蛋白については2次元電気泳動パターン、パワーブロット法について解析を進めた。 
結論
 本年度は齧歯類脳梗塞モデルからサル類モデルに完全に転換した。センダイウイルスベクターに関しては第3世代ベクターであるM,F,HNの3遺伝子欠損ベクターを構築した。霊長類を用いた脳梗塞モデルとして中大脳動脈閉塞モデル、全脳虚血モデルおよび微小血管梗塞であるラクナ梗塞モデルの3種類の梗塞モデルの作成方法を検討した。特に霊長類では微小血管梗塞後の白質の反応が強く、かつ持続することがMRIや組織形態学的に確認され、この微小血管脳梗塞モデルはヒト・ラクナ梗塞の新規モデルとして特許申請した(特願2004-253205)。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-