天然痘ワクチンの科学的備蓄規模と使用に関する研究

文献情報

文献番号
200400177A
報告書区分
総括
研究課題名
天然痘ワクチンの科学的備蓄規模と使用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
蟻田 功((財)国際保健医療交流センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 岩﨑惠美子(仙台検疫所)
  • 中野貴司(独立行政法人国立病院機構三重病院)
  • 桑原紀之(自衛隊中央病院 保健管理センター)
  • 金谷泰宏(防衛医科大学校 防衛医学研究センター)
  • 齋藤智也(慶応大学 医学部)
  • 谷口清州(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
天然痘ウイルスによるテロ対策としてワクチンを備蓄する際、その量と使用法の最善策を研究することが目的である。3つのシナリオ「1 今世紀憂慮されたが流行なし」「2 日本列島の一部にテロによるウイルス散布、数百名程度の発生、緊急ワクチン対策で制圧」「3 シナリオ2の対策失敗又は複数箇所へのウイルス散布による流行、数千万人地域の隔離、経済機能麻痺、サーベイランスや全国民接種で1年かかって終息」のうち、本研究ではシナリオ1、2で検討また国際間の流行に対処する点も考慮に入れた。
研究方法
備蓄のためのワクチンの種類と品質の確認、備蓄ワクチンの規模、使用方法及び臨床実験成績も含めての問題点の検討と備蓄の将来問題の研究を行った。
結果と考察
日本が現在LC16m8ワクチン(LCワクチン)を備蓄している。1970年代に製造許可されたものだが実際に天然痘流行に活用されて感染防御を行ったことはない。しかし、これまでの動物実験で感染防御や弱毒性の利点が証明されており、備蓄に適当と考えられる。なお、備蓄規模はシナリオ1、2を考慮し約5600万人と考える。
野外臨床実験により、1970年代の研究成績を再確認し、新たに被接種人口の接種に対する心理的また身体的影響を調査した。善感率は初回接種者88-95%及び再接種者75-86%である。中和抗体価は接種後4-13倍上昇した。また重篤な副作用の発生はなかった。
接種不適当者の割合は、宮城県と三重県での調査結果、慎重に行えば、約20%となる。相当数が接種を希望しており、接種事業には支障をきたさないが、十分な情報提供によるパニック対策が必要となるだろう。
LCワクチンは従来の痘瘡ワクチンと比較すると保存安定性が低いが、-20℃の保存ではその力価低下は0.5Log pfu以内と推定された。この推定を確認するために長期にわたる追跡調査が必要であろう。
更にLCワクチンの品質や感染防御についての研究、免疫不全動物モデルを用いた安全性についての研究、備蓄ワクチンの安定性の継続的研究等を行うことを提案する。
結論
標記の研究課題について、LCワクチンの品質は備蓄に適当であり、備蓄の規模として5600万人程度が考えられるとした。ただしLCワクチンの今後の研究課題として免疫不全動物モデルを使った安全性の研究や他ワクチンとの感染防御の比較研究が望ましい。なおこれらの研究は官民の共同で行われるべきものであり、特に公的機関の協力が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-07-05
更新日
-