システムの質の評価と途上国の保健医療システム強化支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200400168A
報告書区分
総括
研究課題名
システムの質の評価と途上国の保健医療システム強化支援のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上原 鳴夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合化保健サービス情報システム(Modified-FHSIS)のデータの質について、エラーの発生状況、エラーが発生しているプロセス、エラーを発生させる要因、を検討し、データの質を改善するために必要な情報システムの改善課題を明らかにする。
研究方法
<(1)現状確認調査>Modified-FHSISの標準手順と標準書式に従い、報告が義務付けられている業務実績指標のそれぞれについて、保健ポストでの患者記録、報告対象患者の抽出、計算、報告書への転記、保健センターにおける報告データの転記と集計、州保健局への報告、の各プロセスについて文書を確認し、各プロセスの前後データを比較した。保健ポストは9施設について訪問調査を行ったが、5施設で調査対象となる記録が一部不在等の理由で、計画通りに実施できたのは4施設にとどまった。保健センターは対象10施設中計画通り実施できたのは5施設、部分的に実施できたのは3施設だった。
<(2)理解度調査>ベンゲット州EPQIチームによるブレンストーミングと、保健師、助産師によるフォーカス・グループ討議の結果をもとに、エラーが発生している可能性が高いと思われた指標、プログラム管理上重要と思われた指標を選んで、(模擬TCLから対象患者を抽出させる等の方法で)指標の定義に関する理解度を調べた。
結果と考察
(1)44指標中34指標で、「受診患者台帳(TCL)/診療録(ITR)」の対象患者数」と「集計票の記載数」との間に不一致を認めた。(2)44指標中43指標で、報告書作成過程のいずれかで前後間のデータの不一致が存在した。(3)対象施設の半数以上で不一致の存在を認めた指標は29あった。(妊産婦ケア、子供のケア、家族計画、結核対策関係)(4)現場ではプログラム別にも報告が義務付けられ、少なくとも7つの指標についてFHSISとの重複が認められた。
結論
途上国のデータが信頼できないことは以前から指摘されているが、どんなエラーがどこでどのようにして生じているかについての分析的な調査はあまり行われていない。今回の研究で現状確認調査と理解度調査の有用性が検証され、データ・エラーの実際が明らかになった。また、システムの当事者による参加型実証的改善活動の一環としてこれを実施したことで、改善に繋がる事実根拠が得られやすく、かつ改善への動機付けにもなることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200400168B
報告書区分
総合
研究課題名
システムの質の評価と途上国の保健医療システム強化支援のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上原 鳴夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • マリアン・エバンゲリスタ(フィリピン医療保険庁(東北大学大学院非常勤講師))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
開発途上国では疾病構造の変化、健康と医療における所得階層間の格差が増大し、公共保健医療サービスの役割や社会保障としてのサービス給付のあり方、とりわけ保健医療サービスの質の向上および効率性の改善が求められている。本研究は、フィリピン共和国のFHSIS(保健管理情報システム)を例として、途上国における地域保健医療システムを「質」の観点で評価し改善するための取組みの方法を実証的に検証するとともに、公的医療保険制度の果たすべき役割についてレビュー分析を行った。
研究方法
平成14年度は、①フィリピン共和国で国民皆保険を目指して進められている医療保険システムを対象に、その特徴ならびに問題点を明確にすることによって、保健医療システム強化のための条件分析を行なった。②フィリピン医療保険公社の協力のもと、ベンゲット州保健局、州・県立病院、保健省地方医務局からなる改善チームを形成し, 参加型実証的質改善(EPQI)の技術移転を行った。平成15年度は、①医療保険の仕組みと機能について分析したほか、フィリピン共和国の医療保険新法を邦訳し分析した。②州立病院の患者待ち時間とFHSISのデータの質をテーマとして、「質」と「質的問題」の定義、問題の現状把握の方法、プロセス解析の方法について検討し現状把握調査を行った。PHSISの構造分析を行いプロセス・フロー図を作成した。平成16年度は、①フィリピンの医療質保証と低所得者向け公的医療保険制度についてにレビュー調査をおこなった。②現状確認調査と理解度調査を通じてFHSISの稼動実態とデータの質の評価を行った。
結果と考察
(1)医療保険に関して、会員登録、保険料徴収、支払請求、保険料給付、医療の質保証について問題点を明らかにした。(2)報告対象患者の抽出エラー、報告書間のデータの不一致、報告システムの重複、など、FHSISの改善課題を明らかにした。途上国の保健情報システムが提供するデータが信頼できないことは以前から指摘されたびたび改訂がくりかえされてきたが、どんなエラーがどこでどのようにして生じているかなど事実に基づく要因調査はあまり行われてこなかった。今回の研究を通じてデータの質の実態が明らかになったほか、参加型改善活動、現状確認・理解度調査の有用性が明らかになった。
結論
システムの当事者が進める参加型実証的改善活動の一環として実施されたことは効果的な改善に繋がる事実根拠が得られやすく、かつ改善への動機付けにもなりうることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-24
更新日
-