文献情報
文献番号
200400167A
報告書区分
総括
研究課題名
紛争後の復興開発と平和構築に対する保健医療活動の役割に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
青山 温子(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 喜多 悦子(日本赤十字九州国際看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域紛争後の開発途上国で実施されている保健医療分野の援助活動を平和構築の観点から分析して、復興開発と平和構築支援として効果的な保健医療活動を提案することを目的とする。
研究方法
カンボディアにて、2004年12月12日から23日まで現地調査を実施した。プノンペン、タケオ、コンポントムにて、保健医療活動、障害者支援、精神保健の状況について調査し、カンボディアの紛争と保健医療活動について分析した。また、Complex Humanitarian Emergency (CHE)と健康について、人間の安全保障の観点から分析した。
結果と考察
カンボディアは、紛争終結後10年余経過しており、復旧・復興期から長期開発期へと移行していると考えられる。障害者支援は、国際NGOによる地雷被害者支援が中心となっており、義肢作成やコミュニティ活動等が行われている。紛争により大多数の国民が精神的外傷をもつが、精神保健対策は遅れていて、精神科医の診療はプノンペンの病院等に限られ、NGOが地域精神保健活動を行っている。復興の過程で、経済機会を得た人々と社会的に弱い立場にある人々との格差はますます拡大した。人間の安全保障の観点から、社会的に弱い立場にある人々を含めすべての人々に、基本的社会サービスを保障することが重要である。地域住民が活動に参画して自らをエンパワーメントすることが大切で、そのためには、たとえば、精神保健の自助グループ活動等を通して地域社会の繋がりと信頼関係を強化する等、保健医療活動の貢献できる部分が多くあると思われる。保健医療は、人々の共通の関心事であり、具体的に対話と和解の手がかりを得ることができる。政策レベルでは、地方分権や、バランスのとれた開発をはかることにより、平和の定着を促進することができると考えられる。
結論
復興開発の過程で、社会的弱者が取り残されることのないよう、人間の安全保障の観点から支援することが大切である。格差の拡大は、新たな紛争の要因となり、平和の定着を妨げる。紛争後多くの人々は精神的問題を抱えており、適切に対応されないと、生活再建を妨げ復興開発を遅らせ、暴力的環境に逆戻りする可能性がある。戦略的に人材を養成し、地域で人々の参加を促進しながら介入していくことが必要である。人間の精神を充足させることが重要で、とくに紛争中育った青少年が希望をもてるよう支援することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2005-05-13
更新日
-