文献情報
文献番号
200400166A
報告書区分
総括
研究課題名
戦後日本の健康水準の改善経験を途上国保健医療システム強化に活用する方策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中村 安秀(大阪大学大学院人間科学研究科ボランティア人間科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 石川 信克(結核予防会結核研究所)
- 佐藤 寛(日本貿易振興会アジア経済研究所)
- 大石 和代(長崎大学医学部保健学科)
- 坂本 真理子(愛知医科大学看護学部)
- 吉良 智子(特定非営利活動法人HANDS)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、わが国における戦後の健康水準の改善経験を途上国保健医療システム強化に活用するために、生活改善運動などの農村開発、結核をはじめとする感染症対策、母子手帳などの母子保健対策を中心に、戦後における保健婦、助産婦の活動についても科学的な検討を加えた上で、途上国の立場からそれらの日本での経験の応用可能性を検討する。
研究方法
個別テーマごとに精力的なインタビュー調査を実施するとともに、分担研究者が合同で議論を交わす会合を重ね、座談会の形で、戦後の日本の保健医療経験をどのように途上国のシステム強化に活かすのかという点について有益な議論をまとめた。
結果と考察
1)徹底した現場主義と自己裁量権:生活改良普及員、保健師などは、健康教育、保健改善、生活改善のためにとにかく現場に行くことが奨励されていて、専門職が自宅を訪問するというout-reach活動が重視されていた。2)セクターを越えた協働:当時、厚生省、文部省、農林省という縦割りの官僚機構があり、縦割りの施策が行われていたが、コミュニティ・レベルでは、助産師、保健師、栄養士、生活改良普及員、教員というセクターを越えた協働作業が成立していた。3)受益者からのAppreciation(賞賛や感謝)という評価軸:数値による評価以外の評価軸、すなわちコミュニティからの評価軸が日本にはあった。4)外部からのドナー機関のいない幸運:ドナーがいなかったので優秀な人材が引き抜かれることはなくて、すべて日本のシステムの中にとどまった。5)フロントライン・ワーカーの経済的自立:ヘルスワーカーの経済的な自立性は高かった。助産師や保健師というプロフェッショナルがキーパーソンであり、生活できるだけの収入源は確保されていた。6)既存のシステムの最大限の活用:既存のシステムを最大限に活用していた。7)巧妙なアドボカシーの方法論:住民に働きかけて政治家を動かす、地域外の大学や研究機関協力してデータを収集する、現場の工夫や試行の発表会をもつなど、活動を広めるためのチャンネルをもっていた。
結論
本研究班の成果は、第19回日本国際保健医療学会ワークショップ、第63回日本公衆衛生学会自由集会においてまとまった形で発表された。学会や国際協力機構などの援助機関が「日本の保健医療経験を途上国の保健医療改善に活かす」試みを行うようになったことは、本研究班による大きな社会的インパクトであった。
公開日・更新日
公開日
2005-05-13
更新日
-