少子化の新局面と家族・労働政策の対応に関する研究

文献情報

文献番号
200400103A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化の新局面と家族・労働政策の対応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所(人口動向研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 美雄(慶應義塾大学 商学部)
  • 安藏 伸治(明治大学 政経学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
18,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究は、①出生率の持続的な低下と夫婦出生力の低下について、人口学的、社会経済学的な要因、②女子労働と出生力の関係、③少子化に関する地域自治体の住民意識を明らかにし、施策的含意を明らかにすることを目的として実施した。
研究方法
 本研究班は、①年齢別初婚率や年齢別出生率など人口学的マクロデータの数理モデル研究、②マクロデータに基づく計量経済学的モデル研究、③調査個票データの分析、④自治体統計資料(675市・東京23区)による育児支援策や育児休業制度等の地域間の分析、ならびに⑤)少子化に関する自治体調査による個票データ分析を実施した。
結果と考察
①最近の出生コーホートほど離婚の影響が大きく、近年における出生率の低下への影響が確認された。さらに、女性が出産・育児のために放棄せざるをえない所得を減少するための諸施策が不可欠である。負の価格効果として作用する機会費用の低下が出生力回復の鍵を握っている。若年層における非正規雇用者や無業者の増加が未婚者の親との同居率を有意に高めている。②男女共同参画・子育て支援が出生率へ与える影響について、男女共同参画に関する計画のある自治体では出生率の伸びが大きく、保育所の利用可能性の拡大は出生率を引き上げる効果のあることが見出された。さらに、育児休業中・終了後の調査から、企業の雇用管理に関するニーズとして、勤務時間の短縮やフレックスタイムの導入、勤務日の調整などに対する要請が強く、保育サービスとして、病児保育の充実、幼保一元化、学童保育等小学校以降の教育・保育サービスの充実に対する要請が強かった。③有配偶の女性がもとめている少子化対策は経済的支援を中心に育児支援制度の充実と,それらサービスの弾力的運用ならびに入手可能性の拡大であった。
結論
 研究から見いだされた結論の一つは女性の就業と出産、育児の両立支援策の充実である。研究結果は施策の有効性を示唆するとともに、その抜本的な強化が求められている。ことに育児休業制度の拡充などを通じて、出産・育児の機会費用を減ずるための諸施策はもっとも急がれるものであるが、企業風土、職場環境の改善などの意識改革を並行して実施しなければ、実質的な効果が生まれないことに留意したい。
 マクロ経済政策の面では、景気回復、失業率の改善が早急に必要とされる。とりわけ若年層の雇用環境の整備や正規就業の促進は結婚と出生に直接、間接の好影響を与えるであろう。これが晩婚化、晩産化に歯止めを掛けることになれば、比較的に早く出生率上昇をもたらすことも明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400103B
報告書区分
総合
研究課題名
少子化の新局面と家族・労働政策の対応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所(人口動向研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 美雄(慶應義塾大学 商学部)
  • 安藏 伸治(明治大学 政経学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化の新局面すなわち、1990年代の前半までに見られた結婚行動の変化=未婚率上昇にもとづく合計特殊出生率の低下から、1990年代以降に顕著となってきた結婚後の夫婦の出生子ども数減少という少子化の主体となる要因の局面変化の要因を明らかにすることを目的とし、少子化過程の人口・社会経済学的研究、女性労働と出生力の関係に関する研究、少子化に関する自治体調査研究の三つを研究の柱として実施した。
研究方法
 本研究は、①年齢別初婚率や年齢別出生率など人口学的マクロデータの数理モデル研究、②マクロデータに基づく計量経済学的モデル研究、ならびに③調査の個票データを利用した多変量解析によって研究が進めた。さらに、④全国の自治体のうち、675市・東京23区について、出生ならびに社会経済変数等のデータを収集・リンクし、分析用データベースを作成して育児支援策や育児休業制度等の地域間の分析を実施した。また、⑤東京都品川区・千葉県印旛郡栄町・埼玉県秩父市・岐阜県多治見市,東京都八王子市・神奈川県秦野市について、各自治体の協力を得て少子化に関する自治体調査を実施した。
結果と考察
少子化問題には非常に複雑な要因が交錯しており、諸研究の多くはなお未完成であり、残された課題も多いが、解明された事柄も少なくない。第一に女性の就業と出産の関連である。女性就業と出生率の分析結果から強く導き出された政策的含意であり、女性の就業と育児の両立支援策の一層の充実が求められている。
また、モデルによる研究からは、わが国の雇用慣行や現在進行しつつある就業形態の非正規化は、未婚・晩婚化と夫婦出生力の低下に影響しており、結婚や出産・子育ての機会費用を極めて高い水準に押し上げていることが指摘できる。
結論
 少子化問題は、マクロ経済の回復と同時に、結婚と出生行動にかかわる機会費用を低減させる政策展開なしには、晩婚化、晩産化に歯止めを掛けることは困難であろう。したがって、少子化対策の質と量をいっそう高めると同時に、女性が就労しやすく、男女が家庭生活を営みやすい社会へと変革していくことが極めて重要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-