介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究

文献情報

文献番号
200400102A
報告書区分
総括
研究課題名
介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
白波瀬 佐和子(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、介護サービスを含む公的保障サービスの供給主体である自治体とそこに生活する高齢者の生活実態に着目し、これからの高齢期保障について考察することにある。特に本研究の最終年度では、平成15年10月に実施した「高齢者の生活実態に関するアンケート調査」を分析し、要介護者と未認定高齢者のネットワークの保有状況を明らかにした。
研究方法
 東京都稲城市、東京都品川区、千葉県鎌ヶ谷市の協力を得て、平成15年10月1日「高齢者の生活実態に関するアンケート調査」を実施した。調査対象者は65歳以上の高齢者で、調査時点前で介護認定を受けているもの(介護認定者)と受けていないもの(未認定者)にわけてサンプリングを行った。介護認定者はその時点でほぼ全数を対象とした。未認定者は各自治体の65歳以上未認定者の数によってサンプル数を決定し未認定者の中から無作為抽出した。
結果と考察
 都市近郊の3自治体を調査対象としたが、品川区は高齢者の一人くらし割合が高く、最も都市型の生活様式が認められた。家族や親族が高齢者の支援を提供するエージェントとして中心的な役割を担っていることは、3自治体に共通して本調査結果でも確認された。それでも学歴が高く比較的社会経済的地位が高い高齢者は、親族に頼る傾向はかえって高くなり、家族以外からの支援を市場から購入することはあまりない。男性が親族以外から支援を要請するのは、一人暮らしか否かが最も重要な要因であった。一方女性の場合は、活発な社会的活動が親族以外の支援ネットワークを広げ、社会的活動程度が支援ネットワークを多様なものにするインフラとしての機能を果たしていた。
結論
 少子高齢化が進み世帯構造が変化する中,高齢層においては一人暮しや夫婦のみ世帯が増え、これまで3世代世帯の中で提供されてきた介護ケアをはじめとする生活保障機能が期待できなくなった。それでも男性は、平均寿命の違いや夫婦の年齢差のため、一生を通じて親族と同居しない場面はそれほど多くない。その意味でも、男性にとって高齢期の支援提供は親族による場合が圧倒的であるが、今後も同じように親族だけを頼りにできない。一方女性は、社会活動を通して親族以外の支援ネットワークを広げ、親族以外の支援ネットワークを形成していく。
 2005年の介護保険改正において、介護予防は一つの重要な柱である。肉体的な介護予防だけでなく、親族以外の支援ネットワークを形成しうるようなコミュニティー作りを政策的に後押しすることも必要となってくる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400102B
報告書区分
総合
研究課題名
介護サービスと世帯・地域との関係に関する実証研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
白波瀬 佐和子(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、介護サービスを含む公的保障サービスの供給主体である自治体とそこに生活する65歳以上高齢者の生活実態に着目し、これからの高齢期保障について考察することである。特に、家族・親族によって代表される私的な支援、近隣や友人といった中間的エージェントによる支援、自治体をはじめとする公的な支援、といった3つの支援供給主体間の役割分担をあり方を考察するにあたっての基礎的データを提示する。
研究方法
 本研究は大規模な実証データを計量的に分析する手法と自治体の行担当者との意見交換を通して、研究を進めてきた。大規模データは、厚生労働省が平成13年に実施した「国民生活基礎調査介護票」の再集計と、東京近郊の3自治体の65歳以上高齢者を対象とした調査である。同調査は、東京都稲城市、東京都品川区、千葉県鎌ヶ谷市の協力を得て、平成15年10月1日「高齢者の生活実態に関するアンケート調査」として実施した。調査時点前で介護認定を受けているもの(介護認定者)と受けていないもの(未認定者)に分けてサンプリングを行った。 
 
結果と考察
 年齢や世帯構造によって高齢者の生活状況は異なっていたが、特に支援ネットワークの保有状況においてジェンダー差が認められた。女性は男性に比べて配偶者以外の親族に支援を期待する傾向にあるとともに、より広範な親族支援ネットワークを持っていた。一方、男性は一人暮らしでない限り、家族・親族に大きく依存する形で支援ネットワークが形成されていた。
 また、介護にどの程度の人が関わっているかは、どれだけの広範な親族ネットワークを保有しているかによっており、親族以外の支援提供エージェントの層はまだ薄い。
結論
 高齢期はこれまでの様々な生き方の結果が顕在化し、格差が最も広がる時期である。さらに、平均寿命や世帯との関係からジェンダーによる違いも大きくなる。家族・親族によって担われてきた役割が少子高齢化で急激に弱体化するとは考えられないが、これまでの家族機能を前提としたようなリスクへ対応をもはや期待できない時に来ている。
 家族・親族、近隣、友人、自治体といった支援を提供する多様なエージェントが連携し、共に支えあえるような社会に向けて、新たな制度設計が望まれている。生活の場としての地域が担う役割が重要であることは、疑いない。しかしここでの「地域」はまだその実態が十分に把握しきれていない。本研究では3自治体を対象に横断的な調査を実施するにとどまったが、今後は高齢者と自治体との関係をよりダイナミックに検討していきたい。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-